日本のトンボの種類一覧!見分け方のコツと珍しい絶滅危惧種まで解説

ミヤマアカネ トンボ

子供の頃に虫取り網を持って追いかけた赤トンボ、川辺で見かける美しいメタリックグリーンのトンボ……。
身近な昆虫である「トンボ」ですが、日本にはどれくらいの種類が生息しているかご存知でしょうか?

実は、日本国内だけでも約200種類以上のトンボが記録されています。
一見すると同じように見えるトンボでも、形や色、生態を紐解くと、驚くほど多様で奥深い世界が広がっています。

この記事では、トンボの基本分類から、日本で見られる代表的な種類一覧、初心者でも簡単にできる「見分け方のコツ」、さらには滅多に出会えない希少種まで、トンボのすべてを網羅して解説していきたいと思います。

そもそもトンボとは? 2つの大きなグループ(亜目)

日本にいるトンボを分類する上で、まず知っておきたいのが「不均翅亜目(ふきんしあもく)」と「均翅亜目(きんしあもく)」という2つの大きなグループです。
ここを理解するだけで、トンボの種類を見分けるのが一気に楽になります。

グループ名(亜目)特徴代表種
不均翅亜目(トンボ亜目)・前翅と後翅の形が異なる(後ろの方が広い)
・止まるときに翅を広げて止まる
・がっしりした体型で、複眼が頭部でくっついていることが多い
オニヤンマ、ギンヤンマ、アキアカネ
均翅亜目(イトトンボ亜目)・前翅と後翅がほぼ同じ形
・止まるときに翅を背中合わせに畳む(一部例外あり)
・細長く繊細な体型で、左右の複眼が離れている
アオイトトンボ、クロイトトンボ、カワトンボ

※この他に、日本には「ムカシトンボ亜目(生きた化石と呼ばれる1科1種のみ)」という貴重なグループも存在します。

【系統別】日本で見られる代表的なトンボの種類一覧

ここからは、日本でよく見られる、または知名度の高いトンボを10の系統(科)に分けて、それぞれの特徴と代表種を詳しくご紹介します。

① ヤンマ科:大型で飛行能力抜群の王様

トンボ界の中でも圧倒的な存在感を放つのがヤンマ科です。
大型で、最高時速50km以上で飛ぶことができるほどの高い飛行能力を持っています。

  • ギンヤンマ
    街中の池や公園でもよく見られる代表的なヤンマ。
    オスの腰の部分が鮮やかなスカイブルー(銀色に見えることから命名)をしており、非常に美しいです。常に飛び回っており、なかなか止まってくれません。
  • クロスジギンヤンマ
    ギンヤンマに似ていますが、胸部に黒い筋(クロスジ)があるのが特徴。春先から初夏にかけて、やや薄暗い林に囲まれた池などでよく見られます。

② オニヤンマ科:日本最大のトンボ

  • オニヤンマ
    日本最大のトンボであり、体長は10cm近くに達します。
    黒と黄色の縞模様(虎斑模様)と、エメラルドグリーンに輝く大きな複眼が特徴です。
    小川の上を一定のルートで往復飛行(縄張り見回り)する習性があります。
    蚊やアブ、時にはスズメバチさえも捕食する強力なハンターです。

③ トンボ科(赤トンボの仲間など):最も種類が豊富

私たちが最も目にする機会が多い、バリエーション豊かなグループです。
いわゆる「赤トンボ」の多くもここに属します。

  • アキアカネ(秋茜)
    代表的な「赤トンボ」。
    夏の間は涼しい高地に移動し、秋になると成熟して全身(特にオス)が真っ赤になり、平地に一斉に降りてきます。
  • ナツアカネ(夏茜)
    アキアカネに酷似していますが、ナツアカネは夏でも平地に留まります。
    成熟すると、頭からお腹の先まで「全身がワインレッドのように真っ赤」になるため、アキアカネよりも赤みが強いのが特徴です。
  • シオカラトンボ(塩辛蜻蛉)
    オスは成熟すると体全体に青白い粉を吹き、それが「塩辛」のように見えることから名付けられました。
    一方、メスは黄色に黒い斑点があり、その姿から「ムギワラトンボ」と呼ばれます。
  • ショウジョウトンボ
    赤トンボの仲間(アカネ属)ではありませんが、全身が燃えるような鮮やかな赤色になるトンボです。足まで赤いのが特徴で、夏の池で見かけることができます。
  • コシアキトンボ(腰空蜻蛉)
    全身が黒く、お腹の付け根(腰の部分)だけがぐるっと白いのが特徴。
    まるで腰の部分が空いているように見えることからこの名がつきました。

④ カワトンボ科:ひらひらと舞う川辺の妖精

渓流や緩やかな川の流れを好み、チョウのようにひらひらと優雅に飛ぶグループです。

  • ニホンカワトンボ / アサヒナカワトンボ
    金属光沢のある美しいグリーンの体を持っています。
    羽の色には個体差があり、透明なものからオレンジ色(橙色翅)のものまで存在します。
  • ハグロトンボ(羽黒蜻蛉)
    その名の通り、真っ黒な羽を持つトンボです。
    オスは体がメタリックグリーンに輝きます。お盆の時期によく見かけることから、地域によっては「神様トンボ」として大切に扱われてきました。

⑤ イトトンボ科:細く小さく美しい身近なトンボ

非常に細長い体を持ち、草むらに隠れるように生息している小さなトンボたちです。

  • クロイトトンボ
    池や沼のスイレンなどの浮葉植物の周りでよく見られます。
    オスは胸部が青白色で、黒い条(すじ)があります。
  • アオモンイトトンボ
    尾の先端付近(第8腹節)だけが鮮やかなライトブルーに染まっているのが特徴。環境の変化に強く、都市部のビオトープなどでもよく見られます。
  • キイトトンボ
    イトトンボの中では珍しく、全身が鮮やかなレモンイエロー(黄色)をしています。
    やや太めの体型で、初夏の池で見られます。

⑥ アオイトトンボ科:金属光沢の美しいイトトンボ

イトトンボ科に似ていますが、止まるときに「羽を半開きにして止まる」という面白い特徴を持っています。

  • アオイトトンボ
    全身が美しいメタリックグリーン(青緑色)に輝くトンボです。
    秋口に多く見られ、水辺の草むらに静かに止まっています。

⑦ サナエトンボ科:地面や石に止まる渓流のハンター

左右の複眼が少し離れているのが特徴のグループです。
ヤンマに似ていますが、多くは中型で、地面や川の石の上にペタッと止まる習性があります。

  • ヤマサナエ
    サナエトンボの代表格。黄色と黒のガッシリした体つきで、初夏に川の近くの林道などでよく見かけます。
  • ウチワヤンマ
    名前に「ヤンマ」とついていますが、実はサナエトンボの仲間です。
    お腹の先端に「うちわ」のような平たい突起があるのが最大のチャームポイントです。

⑧ エゾトンボ科:金属光沢をもつスマートなトンボ

  • タカネトンボ
    全身が強い緑色の金属光沢に包まれており、複眼はエメラルドグリーン。
    山地の池や、やや薄暗い水溜まりのような場所を好んでホバリング(空中停止飛行)します。

⑨ ムカシトンボ科:生きた化石

  • ムカシトンボ
    日本とヒマラヤ周辺にしかいない、極めて原始的なトンボです。
    不均翅亜目(トンボ)と均翅亜目(イトトンボ)の両方の特徴を併せ持っており、「生きた化石」と呼ばれています。澄んだ渓流の源流近くにしか生息していません。

⑩ サカモトサナエやコサナエなど、その他の地域特有種

日本には特定の地域や島口にしかいない固有種も多く、これらが日本の生物多様性を支えています。

【初心者向け】トンボの種類を見分ける4つのチェックポイント

「目の前を飛んでいるトンボの名前がわからない!」というときは、以下の4つのポイントを順番に観察(または写真撮影)してみてください。

ポイント①:止まり方を見る(羽は開いているか、閉じているか)

  • 羽を広げて止まる
    ヤンマ科、トンボ科、サナエトンボ科など
  • 羽をぴったり閉じて止まる
    イトトンボ科、カワトンボ科
  • 羽を半開きにして止まる
    アオイトトンボ科

ポイント②:目のつき方(複眼)を見る

  • 左右の目が頭の真ん中でくっついている
    ヤンマ科、トンボ科
  • 左右の目がわずかに離れている(ダンベル型)
    サナエトンボ科
  • 左右の目が完全に離れて、頭の両端についている(ハンマー型)
    イトトンボ科、カワトンボ科

ポイント③:胸とお腹の「模様」と「色」を見る

特に赤トンボ(アカネ属)やサナエトンボの見分けには、「胸の側面の黒い筋の入り方」が決定的な証拠になります。
スマホで写真を撮る際は、真上からだけでなく、真横からのカットを抑えておくと、後から図鑑で調べやすくなります。

ポイント④:見つけた「時期」と「場所」

トンボは種類によって発生する季節(春だけ、秋だけなど)や、好む環境(流れのある川、濁った池、高山など)が明確に分かれています。

例:5月に見かけた赤っぽいトンボ
アキアカネではなく「ショウジョウトンボ」や「サラサヤンマ」の可能性が高い。

日本の珍しいトンボ・絶滅危惧種

環境破壊や水田の減少、外来種の侵入により、かつては身近だったトンボの中にも、現在は絶滅の危機に瀕している種類(レッドリスト掲載種)が多数あります。

絶滅危惧Ⅰ類:ベッコウトンボ

羽に鼈甲(べっこう)のような美しい茶色の斑紋があるトンボです。
かつては本州から九州の平地の池に広く生息していましたが、開発による池の消失や水質悪化、アメリカザリガニなどによる捕食によって激減。現在は環境省の国内希少野生動植物種に指定され、採集は厳しく禁止されています。

世界最小のトンボ:ハッチョウトンボ

  • 特徴
    一円玉(直径2cm)にすっぽり収まるほどの、日本一(そして世界最小級)小さなトンボです。
    オスは成熟すると鮮やかな赤色になります。
  • 生息環境
    どこにでもいるわけではなく、山の斜面からじわじわと水が湧き出ているような「湿地(泥炭湿地)」にしか生息できません。
    環境変化に非常に弱いため、多くの都道府県で絶滅危惧種に指定されています。

トンボに関するよくあるQ&A

Q1. 「赤トンボ」という名前のトンボはいないの?
A. はい、「アカトンボ」という単一の種類はいません。
一般的に赤トンボと呼ばれているのは、トンボ科アカネ属に分類されるトンボの総称(アキアカネ、ナツアカネ、マイコアカネなど)です。
また、アカネ属でなくても、全身が赤くなるショウジョウトンボなども、広く「赤トンボ」として親しまれています。

Q2. トンボのオスとメスはどうやって見分ける?
A. 主に「色」と「お腹の先端の形(腹結構造)」で見分けます。

  • 色による違い
    シオカラトンボ(オス:水色、メス:黄色)のように、全く色が異なる種類が多いです。
  • 体の構造による違い
    オスはお腹の先端にメスを捕まえるための「尾毛(びもう)/ 尾サシ」があり、お腹の付け根(第2・3腹節)に副性器があります。
    メスはお腹の先端付近に卵を産むための「産卵弁」や「産卵管」を持っています。

Q3. オニヤンマの目の色が死ぬと変わるのはなぜ?
A. 複眼の内部にある水分や色素が失われるためです。
生きて生る時のオニヤンマは吸い込まれそうなエメラルドグリーンの目をしていますが、死んで乾燥すると、茶色や黒に変色してしまいます。
標本にする際は、特殊な薬液で緑色を固定する技術が必要です。

まとめ:身近な水辺でトンボを観察してみよう!

日本のトンボの種類について、その多様性と見分け方を解説してきました。
身近な公園の池ひとつとっても、よく観察すると「シオカラトンボ」「ギンヤンマ」「コシアキトンボ」「アオモンイトトンボ」など、複数の種類がそれぞれの縄張りを主張して暮らしていることが分かります。

トンボは「環境の指標昆虫」とも呼ばれ、豊かな水辺や自然が残っている場所にしか生息できません。
もし珍しいトンボを見つけたら、それはその地域の自然が豊かである証拠です。

是非この記事の「見分け方」を参考に、近くの水辺や草むらでトンボ観察(トンボウォッチング)を楽しんでみてください!身近な昆虫の、新しい一面が見えてくるはずです。

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