バッタ目(直翅目:Orthoptera)は、私たちの生活に身近なトノサマバッタやキリギリス、コオロギなどが含まれる大きなグループです。
世界中に約2万種以上が生息しており、その生態や形態は非常に多岐にわたります。
この記事では、バッタ目の特徴から分類、さらには「相変異」という驚異の生態まで解説します。
バッタ目(直翅目)の定義と主な特徴
バッタ目(Orthoptera)は、ギリシャ語で「真っ直ぐな(orthos)翼(pteron)」を意味します。
その名の通り、前翅が細長く、後ろに真っ直ぐに畳む特徴を持っています。
形態的共通点
- 発達した後脚
跳躍に適した、太くたくましい後ろ足を持っています。 - 不完全変態
蛹(さなぎ)の時期がなく、幼虫が脱皮を繰り返して成虫になります。 - 咀嚼口式(そしゃくこうしき)
植物や他の昆虫を食べるための、発達した大顎を持っています。 - 発音器官と聴覚器官
多くの種が翅や足をこすり合わせて音を出し、脚や腹部にある「耳」で音を聞き取ります。
バッタ目の主要な2大亜目
バッタ目は、触角の長さや産卵管の形によって、大きく「バッタ亜目」と「キリギリス亜目」に分けられます。
バッタ亜目(Caelifera)
主に昼間に活動し、植物を主食とするグループです。
- 触角
体長よりも短いのが一般的。 - 聴覚器官
前脚ではなく、腹部の第一節の両側にあります。 - 代表種
トノサマバッタ、ショウリョウバッタ、イナゴ、ヒシバッタ。
キリギリス亜目(Ensifera)
夜行性の種が多く、肉食傾向が強いものや、美しい鳴き声を持つものが含まれます。
- 触角
体長よりも長い。 - 聴覚器官
前脚の脛節(けいせつ)にあります。 - 代表種
キリギリス、コオロギ、カマドウマ、ケラ、クツワムシ。
驚異の生態「相変異」とサバクトビバッタ
バッタ目の中でも、特に人類にとって重要な現象が「相変異(そうへんい)」です。
これは、生息密度の変化に応じて、バッタの形態や行動が劇的に変化することを指します。
孤独相と群生相
- 孤独相(こどくそう)
低密度で育った状態。緑色で脚が長く、おとなしい性質。 - 群生相(ぐんせいそう)
高密度で育った状態。黒っぽく翅が長くなり、攻撃的で長距離飛行に適した体に変化します。
蝗害(こうがい)の脅威
群生相となったバッタ(主にサバクトビバッタなど)が数千億匹という巨大な群れを形成し、農作物を食いつくす現象を「蝗害」と呼びます。
これは古来より人類を脅かす自然災害の一つです。
日本で見られる代表的なバッタ目
| 和名 | 分類 | 特徴 |
| トノサマバッタ | バッタ科 | 日本最大級のバッタ。高い飛翔能力を持ち、草原に生息。 |
| ショウリョウバッタ | バッタ科 | 頭部が尖っており、オスは飛行時に「キチキチ」と音を出す。 |
| エンマコオロギ | コオロギ科 | 「コロコロリー」と鳴く。秋を代表する昆虫。 |
| ケラ | ケラ科 | 前脚がモグラのように発達。土の中を掘り進み、水面も泳げる。 |
バッタ目に関するよくある質問(FAQ)
Q. バッタとイナゴの違いは何ですか?
A. 最大の違いは喉(のど)にあります。
イナゴには前胸腹板突起という「喉仏」のような突起がありますが、一般的なバッタにはありません。
また、イナゴの多くは水田付近を好み、食用にされることもあります。
Q. バッタはどうやって音を出しているの?
A. 種類によって異なります。
バッタ亜目は後ろ足と翅をこすり合わせることが多く、キリギリス亜目(コオロギなど)は左右の前翅をこすり合わせて音を出します。
まとめ:自然界におけるバッタ目の役割
バッタ目は、食物連鎖において「一次消費者(草食)」として、あるいは他の昆虫を食べる「二次消費者」として重要な役割を担っています。
また、鳥類や爬虫類の重要な餌資源でもあります。
庭先で見かける小さなコオロギから、世界を震撼させるサバクトビバッタまで、その多様な世界を知ることで、身近な自然の解像度がより高まるはずです。

