初夏から秋にかけて、野山や公園の樹上で賑やかに鳴く昆虫「ヤブキリ」。
キリギリスの仲間でありながら、主に木の上や藪の奥深くを生活拠点とするので、声はすれども姿は見えずという場面も少なくありません。
この記事では、ヤブキリの基本生態からフィールドでの見つけ方、鳴き声の特徴、類似種との確実な見分け方まで解説します。
ヤブキリとは?基本生態と生息時期
ヤブキリ(藪螽斯)は、バッタ目キリギリス科に分類される昆虫です。
成虫の体長は約35mm〜45mmほどで、鮮やかな全身の緑色と背中に走る一本の褐色(茶色)の条線が特徴的です。
【ヤブキリのライフサイクル】
3月〜 5月 :【孵化・幼虫期】 草原や草むらの足元で活動(草食傾向)
6月〜 7月 :【羽化・成虫初期】 樹上や高い藪へ移動し肉食化
8月〜10月 :【繁殖・成虫後期】 夜間の激しい鳴き合いと交尾・産卵
生息環境と時期
- 生息場所
平地から山地の雑木林、森林の外縁部、緑の多い公園や庭木。 - 見られる時期
幼虫は4月〜5月頃に足元の草むらで出現し、6月頃から羽化して成虫になります。
成虫は10月頃まで観察可能です。
幼虫と成虫で異なる食性
ヤブキリの面白い特徴の一つが「成長に伴う食性の変化」です。
- 幼虫期
タンポポなどの花粉や柔らかな新芽を食べる「植物食メイン」。 - 成虫期
他の昆虫(セミ、アブラムシ、イモムシ、小バッタなど)を強力な大あごで捕食する「獰猛なハンター(肉食メイン)」。
野外でヤブキリを観察するためのコツ
野外観察を行う際、効率よくヤブキリを見つけるアプローチを紹介します。
1. 鳴き声と「風」を頼りに居場所を特定する
ヤブキリの雄は昼夜を問わず鳴きますが、特に夕方から夜間にかけて活発になります。
- 音の表現
「ジキジキジキジキ……」「ジーッ・ジーッ」といった機械的で連続したシャープな金属音。 - 習性
ヤブキリは「風が吹くと一斉に鳴き始める」という独特な性質を持ちます。
風が通り抜ける林の縁や、枝葉が揺れる場所で耳を澄ませてみましょう。
2. 前脚の「大きなトゲ(捕獲脚)」をチェックする
成虫を見つけたら、前脚に注目してください。
肉食性に特化したヤブキリの前脚には、獲物を逃さないための鋭く発達した「刺(トゲ)」がズラリと並んでいます。
この形態はハンターとしての生き様を物語る重要な観察ポイントです。
キリギリスやウマオイとの見分け方

見た目がよく似た他のキリギリス科の仲間とは、生息エリア・背中の模様・腿(もも)のトゲで明確に区別できます。
| 観察項目 | ヤブキリ | キリギリス | ハタケノウマオイ |
| 生息場所 | 樹上・高い藪(木の上) | 背の低い草原・河川敷 | 草むら・竹林 |
| 体型の特徴 | 体長はやや長めでスマート | 体長が大きくガッチリ体系 | 小柄で細身 |
| 背中の模様 | 前胸の背側のみ茶色 | 前翅全体に黒茶の斑点 | 茶色の明確な花瓶模様 |
| 後脚(腿) | 後ろ脚の太い部分の下側にトゲあり | トゲあり | トゲがない |
| 鳴き声 | ジキジキジキ…… | チョン・ギス | スイッチョン |
観察・採集時の注意点
- 噛みつきに注意
成虫は大あごが大変強靭で、不用意に触ると指に噛みついて流血することがあります。
捕獲する際は胸部の後ろ側を優しく持つか、虫取り網を使用しましょう。 - 夜間観察の安全対策
夜間の観察(夜間観察・ナイター観察)を行う場合は、懐中電灯を持参し、足元や周囲の安全(ハチやヘビ、足場の不快感など)に気を配ってください。
まとめ:ヤブキリ観察の要点
- 出現時期と場所
4月〜5月は草むらの足元で幼虫、6月〜10月は雑木林や公園の「樹上・高い藪」で成虫が活動。 - 食性の変化
幼虫は「草食(花粉など)」、成虫は他の昆虫を捕らえる「獰猛な肉食ハンター」。 - 探し方のコツ
「ジキジキジキ……」という金属音と、風が吹いたタイミングでの鳴き合いを頼りに探索。 - 見分け方のポイント
キリギリスと異なり樹上に多く、前脚には獲物を捕らえる鋭いトゲがズラリと並ぶ。 - 観察時の注意
大あごが非常に強力なため、噛みつきによる怪我に注意。
