オンブバッタの生態と見分け方:庭の緑を守るヒント

オンブバッタ バッタ

夏から秋にかけて、庭の草むらやプランターの陰でよく見かける「オンブバッタ」。
小さなバッタが大きなバッタの背中にちょこんと乗っている姿は、どこかユーモラスで微笑ましいものです。

身近な昆虫でありながら、なぜおんぶをしているのか、他のバッタと何が違うのかなど、その詳しい生態は意外と知られていません。

この記事では、オンブバッタの不思議な生態や名前の由来、間違いやすい「ショウリョウバッタ」との確実な見分け方を詳しく解説します。

オンブバッタとは?基本情報と「おんぶ」の微笑ましい理由

まずは、オンブバッタの基本的なプロフィールと、思わず誰かに話したくなる「おんぶ」の秘密に迫ります。

オンブバッタの基本情報

  • 学名
    Atractomorpha lata
  • 分類
    バッタ目(直翅目)オンブバッタ科
  • 分布
    日本全国(本州、四国、九州、沖縄)
  • 発生時期
    5月〜11月頃(成虫は8月〜11月に多く見られます)
  • 体長
    オス:約20〜25mm / メス:約40〜42mm

なぜ「おんぶ」をしているのか?

オンブバッタの最大の特徴は、その名の通り「小さなバッタが、大きなバッタの背中に乗っている」姿です。

【よくある誤解】親が子どもをおんぶしている?

よく「親バッタが子バッタを大切に育てている姿」と勘違いされますが、これは間違いです。正しくは「小さなオスが、大きなメスの背中に乗っている」のです。

オンブバッタはメスのほうが圧倒的に体が大きく、オスの約2倍のサイズがあります。
オスがメスの背中に乗っているのは「交尾のための行動であり、他のオスにメスを横取りされないためのガード行動(配偶行動)」です。

交尾の前後だけでなく、移動するときも食事をするときも、オスはメスの背中に乗り続けます。
メスにとってみれば少し重そうですが、この健気でユニークな習性こそが、オンブバッタが過酷な自然界で子孫を残すための知恵なのです。

オンブバッタの生息地と食性|なぜ私たちの身近にいるのか

オンブバッタは、トノサマバッタやイナゴのように広大な草原や河川敷だけでなく、都市部の狭いお庭や、ベランダのプランターにもピンポイントでやってきます。
その理由を生息環境と食性から紐解きます。

主な生息地:都会の小さなグリーンが隠れ家

オンブバッタは飛行能力が低く、あまり長い距離を飛びません。
そのため、一度住み着いた場所の周辺で生涯を過ごすことが多く、一戸建ての庭、マンションの専用庭、公園の生け垣、路地裏の雑草地などに定着しやすい特徴があります。
私たちの生活圏に最も溶け込んでいるバッタと言えます。

独特な食性:イネ科ではなく「広葉植物」が大好き

多くのバッタ(トノサマバッタなど)はススキやエノコログサといったイネ科の細長い葉を好みますが、オンブバッタは「広葉植物(葉が平たくて広い植物)」を好んで食べます。

特に以下のような植物の葉が大好物です。

  • ハーブ・野菜類
    シソ(大葉)、バジル、ミント、エダマメ、チンゲンサイ
  • お花・園芸植物
    キク、ヒマワリ、ギボウシ、フヨウ
  • 野草・雑草
    ヨモギ、カタバミ、クズ

特にシソやバジルといった香りの強いハーブはオンブバッタの大好物です。
「お庭の植物と上手に付き合う」ためには、彼らがどの植物を好むのかを知っておくことが第一歩となります。

【見分け方】オンブバッタとショウリョウバッタの決定的な違い

オンブバッタと非常によく似た外見を持つバッタに「ショウリョウバッタ(精霊バッタ)」がいます。
どちらも頭が尖った緑色のバッタですが、サイズや行動パターンが大きく異なります。

以下の比較表を参考に、お庭で見かけたバッタがどちらなのか観察してみましょう。

オンブバッタ vs ショウリョウバッタ 識別表

識別ポイントオンブバッタショウリョウバッタ
全体のサイズ小さい(オス2cm / メス4cm)非常に大きい(オス5cm / メス8cm以上)
体型・シルエットやや太めで、ずんぐりしている非常に細長く、スマート
頭部の形円錐形で尖っているが、やや短い非常に長く尖っており、横から見ると平べったい
音(鳴き声)絶対に音を出さないオスが飛ぶ時に「チキチキチキ」と音を出す
飛行能力ほとんど飛ばない(跳ねるだけ)驚くと低空を「ブーン」と長く飛ぶ
おんぶの頻度日常的に頻繁におんぶしている滅多におんぶしない(交尾の一瞬のみ)
主な好物シソ、バジルなどの広葉植物ススキ、エノコログサなどのイネ科植物

観察のコツ

一番簡単な見分け方は「サイズ」と「ジャンプ力」です。
近づいてもあまり遠くに逃げず、2〜4cmほどの小さな尖ったバッタがおんぶしていればオンブバッタです。
一方、ショウリョウバッタのメスは国内最大級のバッタなので、手のひらサイズほどに大きく、近づくと力強く遠くまで飛んで逃げていきます。

オンブバッタの不思議なライフサイクル

オンブバッタは、1年をかけて以下のようなドラマチックな一生を送ります。

【5月〜6月】卵から孵化(可愛い幼虫の誕生)
      ↓
【7月〜8月】脱皮を繰り返して少しずつ大きくなる
      ↓
【9月〜10月】成虫となり、おんぶ(交尾)と産卵の時期
      ↓
【11月〜12月】成虫は寿命を迎え、命のバトンを卵へ繋ぐ

オンブバッタは「不完全変態」の昆虫です。
イモムシやサナギの時期を経て蝶になるのとは異なり、生まれた瞬間からしっかりとバッタの形をしています。

5〜6回ほど脱皮を繰り返して成虫になると羽が生え、お馴染みのおんぶ姿が見られるようになります。
そして秋が深まると、メスはおんぶをされたまま土の中にそっと卵を産み付けます。
成虫は日本の寒い冬を越すことはできませんが、残された卵が土の中でじっと冬を越し、次の春へと命を繋いでいきます。

庭の緑を守りながらオンブバッタと上手に付き合う「防除・共生」のヒント

「オンブバッタの姿は楽しみたいけれど、大切に育てているシソやバジルの葉はきれいに残したい」という方のために、命を傷つけずに植物を守る優しい対策(防除方法)をご紹介します。

① 物理的にガードする「防虫ネット」

おすそ分け用や料理用にきれいに育てたいハーブや野菜には、あらかじめ目の細かい防虫ネットや不織布をかけておきましょう。
オンブバッタは飛ぶのが苦手で、地面からピョンピョンと跳ねて登ってくるため、ネットの裾を隙間なく閉じておくだけで、バッタを傷つけることなく確実に植物を守ることができます。

② 自然の香りで遠ざける「木酢液」

化学的なものを使わず、自然の力でオンブバッタに「お引越し」してもらう方法です。
木を燻製にしたような独特の香りを持つ「木酢液(もくさくえき)」を水で薄めて葉にスプレーしておくと、オンブバッタはその場所を嫌がって別の雑草エリアなどへ移動していきます。

③ 手で優しく捕まえて「お引越し」

オンブバッタは動きがのんびりしているため、手で簡単に捕まえることができます。
もし大切な植物の近くで見つけたら、そっとカゴや手で捕まえて、お庭の隅にある雑草(ヨモギやカタバミなど)の生えたエリアへ移動させてあげましょう。
好む雑草エリアを庭の一角に残しておくことで、大切な園芸植物への集中を分散させる効果もあります。

まとめ|身近な自然の仲間として見守ろう

オンブバッタは、小さな体でおんぶをしながら一生懸命に生きる、とても身近で愛らしい昆虫です。
お庭の植物をちょっぴり味見してしまうお茶目な一面もありますが、その習性を理解していれば、ネットでガードしたり、別の草むらへ移動させたりして、お互いに心地よく共生することができます。

次にお庭で頭の尖った小さなおんぶペアを見かけたときは、是非その微笑ましい姿をじっくりと観察してみてはいかがでしょうか。

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