ニホンミツバチの生態、養蜂、セイヨウミツバチとの違いを徹底解説

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ニホンミツバチとは?日本の自然に育まれた在来種

ニホンミツバチApis cerana japonica)は、その名の通り、日本列島に古来より生息する在来種のミツバチです。
日本の四季や環境に適応し、数千年にもわたって自然と共存してきました。

近年、ニホンミツバチが作るハチミツはその希少性独特の風味から「幻のハチミツ」とも呼ばれ、愛好家が増えています。

ニホンミツバチの主な特徴

詳細
生息地日本全国(北海道、沖縄の一部を除く)
大きさセイヨウミツバチより一回り小さい
やや黒っぽい色味
性格温和臆病、刺激に敏感で逃去(巣を放棄)しやすい
巣作り樹洞、石垣、床下など閉鎖空間を好む
採蜜年に一度の百花蜜(多くの種類の花から蜜を集める)

セイヨウミツバチとの徹底比較:違いを知る

国内で養蜂されているミツバチには、ニホンミツバチの他に明治時代に導入されたセイヨウミツバチApis mellifera)がいます。
この2種は生態や養蜂方法に大きな違いがあります。

ニホンミツバチセイヨウミツバチ
起源日本の在来種(トウヨウミツバチの亜種)ヨーロッパ・アフリカ起源の外来種
体格小さい、黒っぽい大きい、黄色っぽい(イタリアン種など)
耐病性強い(特定病害虫に耐性を持つ)弱い(病害虫防除の薬剤が必要な場合がある)
逃去(逃亡)非常にしやすい(環境変化に敏感)しにくい
分蜂頻繁に行う(群れを増やす性質が強い)比較的少ない
採蜜量少ない(希少性が高い)多い(産業養蜂向き)
ハチミツの種類百花蜜(多様な花の蜜のブレンド)単花蜜が主(アカシア、レンゲなど)

特に注目すべきは、ニホンミツバチがもともと持っている病害虫への抵抗力です。
天敵であるオオスズメバチに対しては、集団で熱を発生させ撃退する「熱殺蜂球」という独自の防御行動をとることが知られています。


ニホンミツバチのハチミツが「幻」と言われる理由

ニホンミツバチが採るハチミツは「和蜜」とも呼ばれ、市場に出回るハチミツ全体のわずか0.1%程度とも言われるほど希少です。

希少性の理由

  1. 採蜜量の少なさ
    1群あたりから採れるハチミツの量が、セイヨウミツバチの数分の一と非常に少ないです。
  2. 飼育の難しさ
    神経質で臆病なため、環境変化や刺激ですぐに巣を放棄(逃去)してしまいます。
    この逃去性の高さが、安定した大量生産を難しくしています。
  3. 採蜜方法
    一般的に、ニホンミツバチの養蜂では巣全体を圧搾して蜜を採る垂れ蜜(たれみつ)という古来の方法を用いることが多く、大量生産に向きません。

ハチミツの風味と特徴

ニホンミツバチのハチミツは、一つの花にこだわらず、季節ごとに咲く多種多様な花から蜜を集める百花蜜です。

  • 風味
    複雑で奥行きのある香りコクのある甘さほどよい酸味が特徴。

  • 採蜜時期や蜜源によって異なりますが、一般的にセイヨウミツバチの単花蜜よりも褐色がかった濃い色味が多いです。
  • 粘度
    やや水分量が多いことから、比較的さらっとしている傾向があります。

ニホンミツバチの養蜂:伝統的な「重箱式」と「分蜂捕獲」

ニホンミツバチの養蜂は、産業的に発展したセイヨウミツバチの養蜂とは異なり、自然の習性を活かした伝統的な手法が重んじられます。

主要な養蜂方法

特徴
重箱式巣箱複数の木枠を積み重ねた巣箱を使用。
ミツバチが自然に近い形で巣を作るのを待つ、最も一般的な飼育方法。
待ち箱の設置巣箱を設置し、野生のニホンミツバチの群れが分蜂(巣別れ)した際に、自ら入居するのを待つ捕獲方法。

養蜂のコツ(分蜂の活用)

ニホンミツバチは春から初夏にかけて分蜂(ぶんぽう:新しい女王蜂が生まれると、元の女王蜂が働き蜂の半数を連れて新しい巣を探しにいく習性)を行います。

この分蜂の時期が、養蜂家が新しい群れを獲得する最大のチャンスです。
分蜂群を誘引するために、ニホンミツバチ特有のフェロモンに似た成分を持つキンリョウヘンというラン科の植物が用いられることも有名です。


まとめ|ニホンミツバチは日本の宝

ニホンミツバチは、単にハチミツを供給するだけでなく、日本の多様な生態系を維持する上で重要な花粉媒介者(ポリネーター)としての役割も担っています。

そのハチミツは、自然の恵みを凝縮したかのような複雑で奥深い味わいがあり、その希少性ゆえに高い価値を持ちます。
日本の里山文化や自然と共生する知恵が詰まったニホンミツバチに、ぜひご注目ください。

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