真っ赤な背中に7つの黒い水玉模様。誰もが一度は目にしたことがある、それがナナホシテントウです。
その可愛らしい見た目から、昔から多くの人に親しまれてきました。
しかし、ナナホシテントウが単なる「可愛い虫」ではないことをご存知でしょうか?
この記事では、ナナホシテントウの驚くべき生態から、似ているテントウムシとの見分け方、そして家庭菜園における重要な役割まで徹底的に解説します。
ナナホシテントウの基本情報|名前の由来と特徴
ナナホシテントウ(Coccinella septempunctata)は、テントウムシの中でも最も広く知られている種の一つです。
その存在感から、「テントウムシ」といえばこのナナホシテントウを思い浮かべる人がほとんどでしょう。
- 名前の由来
その名の通り、左右の羽に3つずつ、そして両羽が合わさる部分に1つの、合計7つの黒い斑点があることから名付けられました。
この規則正しい斑点の配置は、他のテントウムシと見分ける上でも重要なポイントとなります。 - 警戒色
鮮やかな赤色と黒い斑点は、鳥などの天敵に対して「毒があるよ!」「私はまずいよ!」と警告する警戒色です。
実際にナナホシテントウは、危険を感じると関節から黄色い液体を出します。
これは「テントウムシの血」と呼ばれ、苦みや独特な匂いがあり、捕食者はこの経験から二度とナナホシテントウに手を出さなくなります。 - 食性
ナナホシテントウは肉食性で、主にアブラムシを捕食します。
この食性が、人間にとって非常に有益な存在である理由です。
知られざる生態|アブラムシ駆除の最強ハンター
ナナホシテントウは、その可愛らしい見た目とは裏腹に、アブラムシを大量に捕食する「最強のハンター」です。
- 幼虫の姿
ナナホシテントウの幼虫は、成虫とは全く違う姿をしています。
ワニのような細長い体で、黒い体にオレンジ色の斑点があり、いかにも強そうな見た目をしています。
この幼虫もアブラムシを主食とし、成虫以上に食欲旺盛です。
アブラムシの群れの中に幼虫が一匹いるだけで、その群れはあっという間にいなくなってしまいます。 - 驚異の捕食量
一匹のナナホシテントウの幼虫は、成虫になるまでに数百匹以上のアブラムシを捕食すると言われています。
この驚異的な捕食能力は、農薬を使わずにアブラムシの被害を防ぐ「生物的防除」において、非常に重要な役割を果たします。
自然の力で害虫を駆除したいと考える家庭菜園愛好家にとって、ナナホシテントウはかけがえのないパートナーなのです。 - 冬越し(越冬)
秋になると、ナナホシテントウは木の根元や落ち葉の下、石の下などに集団で集まり、冬を越します。
この集団での越冬は、互いの体温を保ち、厳しい寒さから身を守るための重要な戦略です。
春になると再び活動を開始し、植物にアブラムシが発生すると、その近くに産卵します。
ナナホシテントウと似ているテントウムシの見分け方
ナナホシテントウは、他のテントウムシと間違えられやすいことがあります。
特に、同じく益虫であるナミテントウや、害虫であるニジュウヤホシテントウとの見分け方は、家庭菜園を守る上で非常に重要です。
種類 | 益虫・害虫 | 見分け方 |
ナナホシテントウ | 益虫 | 赤い背中に7つの黒い斑点。背中がつるつるとした光沢がある。 |
ナミテントウ | 益虫 | 斑点の数や色が様々。赤い地に黒い斑点、黒い地に赤い斑点など、多様な模様がある。こちらも光沢がある。 |
ニジュウヤホシテントウ | 害虫 | 黄土色や茶色で28個の黒い斑点。背中に短い毛が生えており、光沢がない。 |
ポイント
益虫のナナホシテントウやナミテントウは背中がつるつるしていますが、害虫のニジュウヤホシテントウは毛が生えていて光沢がないことが、最も簡単で確実な見分け方です。
家庭菜園にナナホシテントウを呼ぶ方法
ナナホシテントウは、アブラムシ対策の強い味方です。
彼らを庭に呼び込み、植物を守ってもらうためのヒントをいくつかご紹介します。
- 殺虫剤を使わない
殺虫剤は、アブラムシだけでなく、ナナホシテントウも殺してしまいます。
彼らを大切にしたいなら、できるだけ農薬の使用は避けましょう。 - アブラムシを適度に残す
ナナホシテントウはアブラムシを餌としています。
アブラムシが全くいない環境では、テントウムシも寄り付きません。
彼らが定着できる環境を作るためにも、ある程度のアブラムシは放置しておきましょう。 - ハーブを植える
ディルやフェンネル、コリアンダーなどのハーブは、ナナホシテントウの成虫が好む花を咲かせます。
これらの植物を植えることで、彼らが庭に集まりやすい環境を作ることができます。
まとめ
ナナホシテントウは、その可愛らしい姿からは想像もつかないほど、私たちの身近な自然環境を支える大切な存在です。
もし庭でナナホシテントウを見かけたら、それはあなたの植物を守ってくれているサインかもしれません。
今回の記事を参考に、彼らの生態を理解し、自然の力を借りた安全なガーデニングを楽しんでください。
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