秋の里山を美しく彩るミヤマアカネ。その鮮やかな姿を間近で観察したい、飼育したいと考える方も多いかもしれません。
しかし、トンボは非常に広い視野と優れた動体視力を持つため、ただ闇雲に網を振ってもなかなか捕まりません。
ミヤマアカネを捕まえるには、その「習性」と「活動場所」を知ることが成功への鍵となります。
この記事では、ミヤマアカネの生態に基づいた捕まえ方のコツと、失敗しないための注意点を徹底解説します。
ミヤマアカネの習性を知る:捕獲に最適なタイミング
ミヤマアカネを効率よく捕獲するためには、彼らがいつ、どこで、どんな行動をとるのかを知っておきましょう。
活動が活発な時間帯と天候
- 時間帯
主に晴れた日の昼間に活動が活発になります。
曇りの日や雨の日は草むらなどでじっとしていることが多く、見つけにくくなります。 - 日光浴
成熟したオスは、縄張りとなる水辺で日光浴をするように、目立つ場所にとまっていることが多いです。
捕獲しやすい場所(生息環境)
ミヤマアカネは、他のアカネ属(アキアカネなど)とは異なり、緩やかな流れのある水域を好むのが特徴です。
- 水辺の縄張り
成熟したオスは、丘陵地や低山地の小川、細流、水田などの水際や、その近くの草の先端、木の枝などにとまって縄張りを守ります。 - 未熟な個体
羽化直後や未熟な個体は、水辺から離れた明るい草むらや、時には山頂付近などで見られることもあります。
【捕獲のチャンス!】
交尾や産卵のため、オスとメスが連結している時は、飛翔能力が普段より落ちるため、捕まえやすい最大のチャンスです。
失敗しない!ミヤマアカネ捕獲のテクニック
トンボの優れた視力を欺き、確実に捕まえるための具体的な方法を解説します。
網を使った「かぶせ技」と「スイング」
| 捕獲方法 | ターゲット | コツ・手順 |
| かぶせ技(止まっている時) | 止まっているオス・メス | 1. ゆっくりと蛇行しながら近づく(直線的な動きは警戒されやすい)。 2. トンボの真後ろや真下の死角から、網が届く距離まで接近する。 3. 上から素早く網をかぶせ、すぐに網を反転させて口を塞ぐ。 |
| スイング(飛んでいる時) | 巡回飛行中のオス | 1. トンボが同じ場所を往復する巡回路を見極める。 2. トンボの進行方向や真後ろから、横に払うように網を振る(下から掬い上げるように振ると成功率が上がるとも言われます)。 3. 風上に向かって飛ぶ瞬間は速度が落ちるため狙い目です。 |
網なしでも捕獲できる「指とまり」のコツ
ミヤマアカネを含むアカネ属は、「細く尖ったもの」にとまる習性を持っています。
- 静かに接近
止まっているミヤマアカネの近くに、ゆっくりと指先を近づけます。 - 足場を提供する
トンボの足元か少し上に、指先や細い棒の先端を持っていきます。 - そっと触れる
トンボの胸や翅をそっとつつくと、トンボが飛び上がり、その際に提供された指や棒にとまることがあります。
これは観察にも最適な方法ですが、逃げられないよう静かに扱うことが大切です。
トンボの習性を利用した「ブリ(トンボ釣り)」
これは縄張り意識の強いトンボ(特に大型のヤンマ類に有効ですが、アカネ属でも使われることがあります)の習性を利用した古くからの捕獲法です。
- 仕掛けの準備
約1mほどの糸の両端に、豆粒大の小石(または布で包んだ軽い重り)を結びます。 - 投げ込み
飛んできたミヤマアカネの正面、頭上を飛び越すように仕掛けを投げます。 - 捕獲
トンボはこれを侵入者(または餌)と勘違いして追突し、糸に絡まって墜落したところを捕獲します。
捕獲時の注意点とマナー
捕獲したミヤマアカネを健康に保ち、自然環境を守るためのマナーを徹底しましょう。
- 翅を傷つけない
捕獲後、網から取り出す際は、翅を閉じさせ、胸の部分を優しくつまむようにすると、トンボが暴れて翅が傷つくのを防げます。 - 持ち運び
捕まえたトンボは、広めの飼育ケースや三角紙などに入れ、直射日光を避け、風通し良く持ち運びましょう。 - リリース
飼育や観察の目的が達成されたら、速やかに元の生息地へ帰すのが鉄則です。
特に成虫の長期飼育は非常に難しく、短命に終わらせる可能性が高いです。
ミヤマアカネの美しい姿を自然の中で守り、観察を通してその魅力を深く理解しましょう。


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