秋の里山を彩る美しいトンボ「ミヤマアカネ」。
その飼育にチャレンジする際、最も重要で難しいのが「餌やり」です。
ミヤマアカネは、水中で生活するヤゴ(幼虫)と、空を飛び回る成虫とで、食べるもの、そして与え方が全く異なります。
この記事では、ミヤマアカネの飼育を成功させるために、段階ごとに適切な餌と与え方のコツを詳しく解説します。
1. 共通の基本原則:ミヤマアカネは「肉食」で「生きた餌」が必須!
ミヤマアカネのヤゴも成虫も、他のトンボと同様に肉食性です。
そして、餌を認識し捕食するのは、基本的に「動くもの」に対してのみです。
動かない餌(乾燥飼料、死んだ昆虫など)は食べません。
ヤゴには生きた水生生物、成虫には生きた飛翔昆虫を与える必要があります。
この「生きた餌」の確保が、ミヤマアカネ飼育の最大のポイントであり、難関となります。
2. ヤゴ(幼虫)の餌と与え方
ミヤマアカネのヤゴは水中で生活し、獲物を待ち伏せ、折りたたみ式の下唇(かしん)を伸ばして捕らえます。
適切な餌の種類
ヤゴの大きさ(成長段階)に合わせて餌のサイズを変える必要があります。
| 成長段階 | 主な餌の例 | 入手方法 | ポイント |
| 幼齢(小さいヤゴ) | ブラインシュリンプ、ミジンコ、ボウフラ | 釣り餌店、ネット、水田や池で採取 | 孵化したばかりの非常に小さなヤゴに最適。 |
| 中・終齢(大きくなったヤゴ) | アカムシ(冷凍・生)、イトミミズ(イトメ)、ユスリカの幼虫、小型のメダカ、オタマジャクシ | 釣り餌店、ペットショップ、ネット | 飼育のメインとなる餌。動くことが重要。 |
餌の与え方のコツ
- 動かす工夫
冷凍アカムシを与える場合は、解凍後、ピンセットでつまんでヤゴの目の前で動かして、生きているかのように見せると捕食することがあります。 - 水の汚れ対策
生きた餌(特にアカムシ、イトミミズ)は水を汚しやすいため、食べ残しは必ず網などでこまめに取り除きましょう。 - 共食い防止
ヤゴは餌が不足すると共食いを始める習性があります。
多頭飼育をする場合は、餌を十分与えるか、一匹ずつ個別飼育(隔離)することをおすすめします。 - 給餌頻度
毎日観察し、ヤゴの腹部の膨らみや活発さを見ながら、適量を把握しましょう。
3. 成虫の餌と与え方
トンボの成虫は、飛翔しながら小さな虫を空中で捕獲します。
飼育下でこの自然な捕食行動を再現するのは非常に困難なため、長期飼育は難しいとされています。
適切な餌の種類
成虫は空中で捕獲できる小さな飛翔昆虫が主食です。
- ショウジョウバエ
- アブラムシ
- 小型のハエ(イエバエの幼虫を羽化させるなど)
- 小さなガ
市販の爬虫類用の餌(サシ、ミルワームなど)の幼虫を羽化させて与える方法もありますが、野生の飛翔昆虫を捕まえるのが最も自然な餌となります。
餌の与え方のコツ(手渡し給餌)
成虫を飼育する場合、多くは手渡し(強制給餌)が必要になります。
- 餌を固定
生きた餌(ショウジョウバエなど)をピンセットで挟むか、死んだ餌であれば頭部を切り、トンボの口に持っていけるように準備します。 - 口元へ
トンボをそっとつかみ、餌をトンボの大顎(口)の正面に押しつけるようにして近づけます。 - 捕食の補助
トンボが食いついたら、食べやすいように餌を固定して補助します。 - 頻度
トンボは大食いなので、体格に見合った量の餌を、毎日十分に与える必要があります。
成虫飼育の注意点
- 給水餌とは別に、水(湿度)も重要です。
霧吹きでケージ内を保湿するか、濡れた布やスポンジを置いて、水分補給ができる環境を整えてください。 - 開放と放飛
成虫は飛び回るスペースがないとすぐに弱ったり、翅を傷つけたりします。
観察が終わったら速やかに自然に帰すのが最善です。
やむを得ず短期間飼育する場合も、毎日数回は広い空間で自由に飛ばせてあげましょう。
まとめ
ミヤマアカネの飼育は、ヤゴ・成虫ともに「生きた餌の確保」と「適切な環境管理」が不可欠です。
| 飼育段階 | 最重要ポイント |
| ヤゴ(幼虫) | アカムシ・イトメなどの水生生物をサイズに合わせて与え、共食いを防ぐ。 |
| 成虫 | 生きた飛翔昆虫を確保し、手渡しで根気よく与える。広い飼育スペースと保湿が必須。 |
この餌の知識を活かし、ミヤマアカネの美しい生態を間近で観察してみましょう。


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