「クモ」と聞くと、多くの人は「昆虫」の仲間だとイメージするかもしれません。
しかし、実はクモは昆虫とは全く異なる生物グループに分類されます。
この記事では、クモの基本的な特徴から、昆虫との決定的な違い、そして身近な種類のクモまでを解説します。
1. クモは「昆虫」ではない!決定的な違いとは?
クモは、カニやエビと同じ節足動物の仲間ですが、分類学的には昆虫が属する「六脚亜門」ではなく、「鋏角亜門(きょうかくあもん)クモガタ綱クモ目」に分類されます。
昆虫とクモを見分けるための、最も大きな違いは以下の通りです。
| 特徴 | クモ | 昆虫 |
| 足の数 | 8本 | 6本 |
| 体の構造 | 頭胸部と腹部の2部に分かれる | 頭部、胸部、腹部の3部に分かれる |
| 触角 | なし(触肢・鋏角がある) | 2本ある |
| 羽(翅) | なし | 種類によってあり |
| 眼 | 単眼がふつう8つ(種類による) | 複眼が2つ |
この中でも、8本の足と2つに分かれた体(頭胸部と腹部)は、クモを昆虫と区別するための最も重要なポイントです。
2. クモの生態:糸と毒のスペシャリスト
クモは、地球上に約50,000種が確認されている肉食性の生き物です。
その生態には、ユニークな特徴があります。
🕸️ 驚異の「糸」使い
クモは、腹部にある糸いぼから、目的や用途に応じて多種多様な糸を出します。
- 造網(ぞうもう):獲物を捕らえるための網(クモの巣)を作る
- 獲物の捕獲:捕らえた獲物を巻き付けて無力化する
- 命綱・移動:移動時の安全確保や、「バルーニング」と呼ばれる行動で風に乗って移動する
網を張るクモ(造網性)と、網を張らずに獲物を追いかけるクモ(徘徊性)が、ほぼ半数ずつ存在します。
💉 ほとんどの種が「益虫」
クモは肉食性で、ハエや蚊、ゴキブリの幼虫などの昆虫を捕食します。
これは、私たち人間にとっての害虫駆除に役立つため、「益虫」としての一面を持っています。
昔から、「家の中のクモは殺すな」と言われるのは、このためです。
🚨 毒と危険性
ほとんどのクモは、獲物を麻痺させるための毒を持っていますが、その毒性は人間には無害か、咬まれても軽症で済むものが大半です。
ただし、日本国内にも存在するセアカゴケグモのように、人間に危険を及ぼす神経毒を持つ特定外来生物もいます。
セアカゴケグモは攻撃性が低く、触れない限り咬まれる心配はほとんどありませんが、発見した際は自治体等に連絡し、素手で触らないように注意が必要です。
3. 身近なクモの代表的な種類
日本でよく見られるクモの中から、代表的な種類を紹介します。
| 種類 | 特徴 | 生態 |
| ジョロウグモ | 黄色と黒(青)の鮮やかな体色。 メスが大型。 | 大きな円網を張る造網性。 秋によく見られる。 |
| ハエトリグモ | 跳躍力に優れ、目が発達している。 体長は8mm前後。 | 網を張らずに獲物を追いかける徘徊性。 家の中でもよく見られる。 |
| アシダカグモ | 脚が長く大型で、ゴキブリの天敵として知られる。 | 網を張らない徘徊性。 家屋内に生息することがある。 |
| セアカゴケグモ | 全体が黒く、メスの腹部に赤い斑紋がある。 | ベンチの下など、日当たりが良く隙間がある場所に不規則な網を張る。 毒を持つため要注意。 |
まとめ:クモは生態系に不可欠な8本足の益虫
クモは、昆虫ではない8本足の節足動物であり、その優れた糸の能力と肉食性によって、生態系において重要な役割を果たしています。
多くのクモは人間に無害な「益虫」ですが、ごく一部の毒グモには注意が必要です。
クモの生態を理解し、家の中の害虫を駆除してくれる存在として、適切な距離で共存していくことが大切です。


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