身近な昆虫「カマキリ」に潜む外来種の影
秋の風物詩としても知られるカマキリは、子どもから大人まで馴染み深い昆虫です。
しかし近年、日本国内で外来種のカマキリが確認され、その生態系への影響が懸念されています。
この記事では、現在日本で見られる主な外来種カマキリの種類、その生態、そして日本の在来種(オオカマキリ、チョウセンカマキリなど)との違いや、生態系に及ぼす影響について詳しく解説します。
🧐日本で確認されている主な外来種カマキリ
日本で特に注目されている外来種カマキリは、主にペットや海外からの輸入ルートで持ち込まれ、定着したと考えられています。
1. 移入種としての「チョウセンカマキリ」論争
まず知っておきたいのが、日本のカマキリの代表種の一つであるチョウセンカマキリです。
- 学術的な分類
チョウセンカマキリは、元々は朝鮮半島や中国大陸に生息していましたが、明治時代以降に日本国内に移入・定着した移入種(外来種の一つ)として扱われることがあります。 - 現状の認識
現在では、広く日本全国に分布し、在来種のオオカマキリと競合しながらも、日本の自然に溶け込んでいると見なされています。
しかし、元々いなかった地域での定着は、在来種への影響も指摘されています。
2. 「ムネアカハラビロカマキリ」の急速な拡大
近年、特に分布域を拡大しているのがムネアカハラビロカマキリです。
- 特徴
在来種のハラビロカマキリと非常によく似ていますが、胸部(前胸背板)の裏側が赤褐色である点が最大の特徴です。 - 原産地と侵入経路
中国南部〜東南アジア原産と考えられており、主に輸入植物などに付着した卵鞘(らんしょう)によって国内に侵入したとされています。 - 生態的影響
都市部の公園や緑地で急速に増殖しており、在来種ハラビロカマキリとの餌資源や生息地の競合が懸念されています。
🔎外来種と在来種の見分け方(ムネアカ vs ハラビロ)
外来種カマキリの中でも、最も身近で混同されやすいムネアカハラビロカマキリと在来種ハラビロカマキリの見分け方は非常に重要です。
| 特徴 | ムネアカハラビロカマキリ(外来種) | ハラビロカマキリ(在来種) |
| 胸部裏側 | 赤褐色(ムネアカの名前の由来) | 黄緑色~黄白色 |
| 後翅の色 | 濃い紫~黒っぽい色 | 透明か、やや茶色がかる程度 |
| 体色 | 全体的にやや明るい緑色 | 濃い緑色または褐色 |
| 生息傾向 | 都市部の公園、植え込みで多い | 樹上や草原など比較的広い範囲 |
👀最も確実な見分け方
捕まえてカマの根元部分の胸の裏側を確認し、赤い色があれば外来種のムネアカハラビロカマキリの可能性が高いです。
⚠️外来種カマキリが日本の生態系に与える影響
外来種の侵入は、日本の自然環境に以下のような深刻な影響を及ぼす可能性があります。
1. 在来種との競合による駆逐
外来種カマキリ、特にムネアカハラビロカマキリは、繁殖力が高く、同じニッチ(生態的地位)を持つ在来種のハラビロカマキリの餌や生息地を奪います。
その結果、競合に弱い在来種の個体数が減少し、地域によっては駆逐されてしまう恐れがあります。
2. 食物連鎖の変化
カマキリはバッタや他の昆虫を食べる捕食者であり、また鳥類などの捕食対象となる被食者でもあります。
強力な外来種が定着すると、それまで在来種が担っていた食物連鎖のバランスが崩れ、生態系全体の構造が変わってしまう可能性があります。
3. 未知の寄生虫や病気の持ち込み
外来種が持ち込まれる際、その体に付着していた未知の寄生虫や病原菌が日本の在来種に感染し、大きな被害をもたらすリスクもゼロではありません。
✅まとめと私たちにできること
カマキリの外来種問題は、私たちが日々の生活の中で意識しなければならない、身近な環境問題の一つです。
- 外来種
ムネアカハラビロカマキリが特に都市部で拡大しており、在来種ハラビロカマキリとの競合が懸念されています。 - 影響
在来種の個体数減少や食物連鎖のバランス崩壊が主な懸念点です。 - 対策
外来種と疑われるカマキリを見つけても、絶対にむやみに移動させたり、別の場所に放したりしないことが重要です。
また、ペットとして飼育されていたカマキリを野外に逃がす行為は厳禁です。
この問題についてさらに詳しく知りたい場合は、お住まいの地域の在来種の分布状況や、外来種駆除に関する自治体の取り組みについて検索することをおすすめします。


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