【解説】イトトンボの種類と見分け方!日本の代表的な種類から飼育方法まで

イトトンボ トンボ

「イトトンボ」という名前の通り、糸のように細く美しい体を持つトンボの仲間。
水辺で見かけることが多いですが、その種類は非常に多く、色や模様もさまざまです。

この記事では、日本の水辺で見られる代表的なイトトンボの種類とその見分け方、さらに詳しい特徴や飼育方法までを解説します。
イトトンボの世界に一歩踏み込んでみましょう!


イトトンボとは? 基本の知識

イトトンボは、トンボ目(蜻蛉目)の均翅亜目(きんしあもく)に属する昆虫の総称です。

イトトンボの特徴

  • 体型
    非常に細長く、小型の種類が多いです。
  • 翅(はね)
    前後の翅がほぼ同じ形(均翅亜目の特徴)で、細く透明です。
  • 休息時の姿勢
    多くの種類は、翅を背中にそろえて閉じて止まります。
    ただし、アオイトトンボ科などは翅を半開きにして止まる特徴があります。
  • 幼虫(ヤゴ)
    細長く、腹部の先端に3枚の細長いエラ(尾鰓:びさい)を持つのが特徴です。

「イトトンボ」という言葉は、主にイトトンボ科を指すことが多いですが、広義にはアオイトトンボ科やモノサシトンボ科など、小型で細身の均翅亜目のトンボ全体を指すこともあります。


日本の代表的なイトトンボの種類と見分け方

日本には50種以上のイトトンボの仲間が生息していますが、ここでは特に水辺でよく見られる代表的な種類をいくつかご紹介します。

1. クロイトトンボ(イトトンボ科)

  • 生息地
    春から秋にかけて、各地の池や沼、水田などの水辺で最も普通に見られます。
  • 特徴
    • 成熟したオスは、胸部に青白い粉を吹くことが最大の特徴で、他の種と区別しやすいです。
    • 腹部の先端のみが青色になります。
    • メスには青色型と黄色型がいます。
  • 見分け方
    成熟オスに見られる「青白い粉」が目印です。

2. アオモンイトトンボ(イトトンボ科)

  • 生息地
    東北から八重山まで広く分布し、クロイトトンボと並んで非常に普通に見られます。
  • 特徴
    • オスは黒い体に水色または青色の斑紋を持ちます。
      特に第8腹節(腹部の先端から2番目)が青くなるのが特徴的です。
    • メスは成熟につれてオレンジ色から褐色に変化する「異色型」と、オスに似た色になる「同色型」がいます。
  • 類似種との比較
    アジアイトトンボ(第9腹節が青くなる)と似ていますが、青い部分の位置で区別できます。

3. キイトトンボ(イトトンボ科)

  • 生息地
    初夏から夏にかけて、平地から山地の水生植物が茂る池沼や湿地で見られます。
  • 特徴
    • オスは全身が鮮やかな明るい黄色で、腹部の先端が黒い、非常に目立つイトトンボです。
    • メスは緑色を帯びた黄色です。
  • 見分け方
    その名の通り、全身の黄色が特徴的で、他のイトトンボとは容易に区別できます。

4. ルリイトトンボ(イトトンボ科)

  • 生息地
    平地から高山の湿原、池沼に生息し、特に北海道や本州中部以北に分布します。
  • 特徴
    • オスは全身が美しい瑠璃色(水色)をしています。
    • メスはオスと同色型と黄緑色型がいます。
  • 見分け方
    全身が水色に見えるイトトンボは他にもいますが、分布域や胸部・腹部の斑紋の形などで見分けます。

5. ホソミオツネントンボ(ホソミイトトンボ属)

  • 特徴
    • 成虫で越冬する、日本では珍しいイトトンボです。
      越冬型と夏型があり、体色や翅胸の黒条の太さが異なります。
    • 越冬明けの春先に見られることが多いです。

6. アオイトトンボ(アオイトトンボ科)

  • 特徴
    • イトトンボ科とは異なり、翅を半開きにして止まるのが最大の特徴です。
    • 成熟したオスと一部のメスは、青白い粉を吹きます。
    • 腹部の輝くような金緑色の光沢が美しい種です。

イトトンボの生態と魅力

イトトンボは、水辺の環境を測る指標生物としても重要です。

  • 交尾(ハート型)
    トンボの交尾は、オスとメスが腹部を繋げて輪を作りますが、イトトンボの仲間(均翅亜目)は、その細い体がよく曲がるため、連結部分が美しいハート型になるのが大きな魅力の一つです。
  • 活動
    水面すれすれを活発に飛翔し、水草などに産卵します。
  • 食性
    成虫は小さな昆虫(蚊やハエなど)を捕食し、幼虫(ヤゴ)はミジンコなどの水生生物を捕食します。

イトトンボの飼育(難易度高)

イトトンボは飼育が難しい昆虫の一つですが、ヤゴから羽化、あるいは成虫を観察したい場合は以下の点に注意が必要です。

幼虫(ヤゴ)の飼育

  • 環境
    元々いた場所の砂や泥、水草を入れ、カルキ抜きした水(20〜25℃目安)を用意します。
  • 注意点
    幼虫は共食いをしやすいので、基本的には個別飼育が推奨されます。

  • ふ化直後はブラインシュリンプ、成長するとミジンコや冷凍アカムシを動かして与えます。
  • 羽化
    羽化には水面から10cm程度出る棒や水草が必要です。

成虫の飼育

  • 環境
    イトトンボは活発に飛び回るため、広いスペース(洗濯ネットなどを加工した大型のケージなど)が必要です。
    翅を傷つけないよう、プラスチック製より網状のものが良いでしょう。
  • 保湿
    霧吹きなどで適度な湿度を保ち、水場も作ります。

  • 成虫は動く小さな昆虫しか捕食しないため、ショウジョウバエなどの生きた餌を確保するのが非常に困難です。
    ピンセットでレッドローチなどの体液を口元に運んでなめさせるという特殊な給餌方法もありますが、非常に難易度が高いです。

イトトンボの成虫飼育は難しいため、捕まえた場合は短期間観察後に逃がしてあげるのが、イトトンボにとっても良い選択と言えます。


まとめ

イトトンボは、その繊細で美しい姿から多くの人を魅了します。
水辺の環境によって生息する種類が異なるため、クロイトトンボやアオモンイトトンボといった普通種から、地域特有の珍しい種類まで、見比べながら水辺の散策を楽しむのもおすすめです。

この解説を参考に、ぜひお近くの水辺で、あなただけの「イトトンボ」を探してみてください。

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