清流の証であるヘビトンボ。その幼虫は「孫太郎虫(まごたろうむし)」として知られ、釣り餌や地域によっては食用・薬用として珍重されてきました。
この記事では、水のきれいな場所にしか生息しないヘビトンボを捕まえたい方のために、幼虫(孫太郎虫)を川で採集する方法と、成虫を効率良く見つける方法を解説します。
⚠️ 採集前の重要事項|大アゴに注意!
ヘビトンボの幼虫・成虫ともに、発達した大きなアゴ(大腮)を持っています。
捕獲する際は、不用意に素手で触ると噛みつかれる危険性があります。
強力な毒はありませんが、痛みを伴うため、必ずピンセットや軍手、捕獲用の網などを使用しましょう。
幼虫(孫太郎虫)の捕まえ方|清流での「虫踏み」
ヘビトンボの幼虫は、水質が非常にきれいな上流〜中流の渓流の石の下や、礫(れき)の中に隠れて生活しています。
📌 幼虫の生息場所
- 場所
水が澄んでいて、石や砂利が多い川底。特に流れの比較的速い「早瀬」を好みます。 - 時期
幼虫は通年いますが、大きくなりやすい秋(10月〜11月頃)が採取に適しているとされることがあります。
🛠 準備するもの
- 四つ手網(よつであみ)またはタモ網
水生昆虫を採集するための網。四つ手網は広い範囲を効率よく採集できます。 - 軍手・長靴(ウェーダー)
水中で活動するため。 - ピンセット
危険な幼虫を安全につまむため。
採取方法「虫踏み(ざざむし採り)」の応用
ヘビトンボの幼虫は泳ぎが苦手で、川底の石にしがみついています。
この習性を利用して、石から剥がして網に追い込む方法が一般的です。
- 網の設置
川の流れの下流側(または横)に四つ手網やタモ網をしっかりと設置します。 - 石起こし
網の上流側へ移動し、川底にある大きめの石を一つ一つひっくり返します。 - 虫踏み
ひっくり返した石の周辺や、川底の砂利(礫)を足でガリガリと掻き、踏みつけます。
この「虫踏み」と呼ばれる動作で、石や砂利の下に潜んでいた幼虫を驚かせ、流れに乗せて網に誘導します。 - 網の確認
網を引き上げ、付着している幼虫を選別します。
幼虫はムカデのような見た目(川ムカデと呼ばれる所以)で、体長は成長すると40mm〜60mmほどになります。
成虫の捕まえ方|夏の夜が狙い目
ヘビトンボの成虫は、主に夏の夜に活動し、夜間に飛行する習性があります。
📌 成虫の生息場所・活動時期
- 時期:6月〜9月頃(地域による)
- 活動時間:主に日没後の夜間
- 場所:幼虫の生息地である渓流沿いの林、または灯火周辺
採集方法①:灯火採集(ライトトラップ)
ヘビトンボの成虫は、カブトムシやクワガタムシと同じように、光に集まる(走光性)性質を持っています。
- 場所の選定
渓流や山沿いに近い街灯、または自動販売機の灯りなどを探します。 - 夜間に活動
没後、これらの灯火の周辺を観察します。
ヘビトンボは、灯りの下に落ちていたり、壁に静止していたりすることがあります。 - 注意点
ヘビトンボは昼間は木の上などで休んでいることが多く、夜間に活動が活発になります。
採集方法②:樹液採集(夜間の巡回)
成虫は樹液を吸うため、カブトムシが集まるような広葉樹林の樹液ポイントでも見つかることがあります。
- 樹液ポイントの確認
ナラ類などの樹液が出ている場所(雑木林など)を昼間に確認しておきます。 - 夜間の巡回
夜間に懐中電灯を持って巡回し、樹液を吸っているヘビトンボを探します。
幼虫(孫太郎虫)を飼育・観察するには?
ヘビトンボの幼虫は、その生態から飼育がやや難しい昆虫です。
適切な飼育環境
- 水温
清流に棲むため、低温に保つ必要があります。
夏場は水槽用クーラーやペルチェ素子などでの水温管理が必須です(できれば20℃以下)。 - 溶存酸素
エアレーション(ブクブク)を強化し、十分な酸素を供給します。 - 底床
幼虫が隠れられるよう、川で採取した石や砂利を敷き詰めます。 - 給餌
幼虫は肉食性です。川で採取した他の水生昆虫(カワゲラ幼虫など)、または小さな魚の切り身などを与えます。
終齢幼虫の管理(蛹化に向けて)
終齢幼虫は、蛹になるために水辺に上陸します。
- 水槽内に、水面よりも高い「陸地」として、湿った土や朽木、苔などを配置します。
- 幼虫が陸地に上がって穴を掘り、蛹室(ようしつ)を作るのを待ちます。
まとめ:ヘビトンボ採集のポイント
| 特徴 | 幼虫(孫太郎虫) | 成虫 |
| 生息場所 | 清流の上流〜中流の石や砂利の下 | 渓流沿いの林、樹液、灯火周辺 |
| 主な活動時間 | 川底の石の下(夜行性) | 夜間(灯火に飛来) |
| 採集時期 | 通年(秋が特に大きい) | 6月〜9月の夏 |
| 採集方法 | 虫踏み(四つ手網)で流れに乗せて網に追い込む | 灯火採集、樹液採集 |
ヘビトンボは貴重な水質指標生物です。
採取する際は、環境を荒らさないよう十分注意し、必要な分だけを捕獲するように心がけましょう。


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