夏の終わりから秋にかけて、公園や住宅街の植え込みから聞こえてくる、「リーリーリー」という高く澄んだ鳴き声。その正体は、今回ご紹介するアオマツムシです。
マツムシと名前が似ているため、しばしば混同されますが、その生態や鳴き声には全く異なる特徴があります。
この記事では、アオマツムシの生態や特徴、そして都市部で「うるさい」と感じる人が増えている理由と解説します。
1. アオマツムシとは?基本情報と特徴
アオマツムシ(学名:Oecanthus longicauda)は、バッタ目カネタタキ科に分類される昆虫です。
日本の秋の風物詩として知られるマツムシやスズムシとは、分類上も全く異なるグループに属します。
- 生息地
もともと日本の本州南部などに生息していましたが、都市化や地球温暖化の影響で、近年は生息域を北に広げ、街路樹や公園、住宅街の植え込みなどでよく見られるようになりました。 - 体色
その名の通り、体が淡い緑色をしており、細く長い脚と触角が特徴です。
草木の上で生活するため、この体色が保護色となります。 - 活動時間
主に夜行性で、日没後から明け方にかけて活発に鳴きます。
街灯や家の明かりに集まってくる習性があります。
アオマツムシの鳴き声は、オスが前翅をこすり合わせて出す求愛の歌です。
非常に高く、耳に残りやすい音色で、気温が高いうちは連続して鳴き続ける傾向があります。
2. マツムシや他の鳴く虫との決定的な違い
アオマツムシは、マツムシやスズムシ、コオロギなど、他の鳴く虫とどのように違うのでしょうか?
特に混同されやすいマツムシとの違いを見てみましょう。
アオマツムシ | マツムシ | スズムシ | |
鳴き声 | 「リーリーリー」(連続的) | 「チンチロリン」(リズミカル) | 「リーン、リーン」(鈴の音) |
分類 | カネタタキ科 | マツムシ科 | コオロギ科 |
体色 | 緑色 | 褐色 | 黒色 |
主な生息地 | 街路樹や庭木などの樹上 | 草むら、河川敷などの地上 | 草むら、人家の床下など |
このように、アオマツムシが樹上で鳴くのに対し、マツムシは草むらの下でひっそりと鳴きます。
鳴き声の質も全く異なり、アオマツムシの連続的な音は、マツムシのリズミカルな音とはっきり区別することができます。
3. アオマツムシの鳴き声が「うるさい」と感じる理由と対策
秋の風情を演出してくれるはずの虫の音が、近年「騒音」として問題視されることがあります。
その主な理由は、アオマツムシの増加と、鳴き声の性質にあります。
理由1:街路樹の増加と生息域の拡大
都市部で街路樹が整備されたことで、アオマツムシにとって住みやすい環境が広がりました。
その結果、住宅街のすぐそばで大量に発生し、鳴き声が近隣に響きやすくなりました。
理由2:鳴き声の性質
アオマツムシの「リーリーリー」という鳴き声は、非常に高く、耳に残りやすい高周波です。
また、気温が高い日には夜通し鳴き続けることもあるため、人によっては睡眠を妨げられるなど、不快な騒音に感じてしまうことがあります。
対策:鳴き声が気になる場合
アオマツムシは、病害を媒介したり家屋に被害を与えたりするわけではないため、基本的に駆除の必要性はありません。
しかし、どうしても鳴き声が気になる場合は、以下の対策を試してみてください。
- 音を遮る
窓を閉めたり、厚手のカーテンを引いたりすることで、ある程度の音を遮断できます。
特に、遮音性や防音効果のある窓やカーテンは有効です。 - 光を遮る
アオマツムシは光に集まる習性があります。
夜間に部屋の光が外に漏れないようにカーテンを閉め、必要のない外灯は消すことで、窓の近くに集まってくるのを防ぐことができます。 - 忌避剤
一時的に鳴き声を抑えたい場合は、虫除けスプレーやハッカ油を混ぜた水を、鳴き声のする場所の周りに散布する方法もあります。
ただし、直接かけるのではなく、植物を傷めないよう注意が必要です。
まとめ
アオマツムシの「リーリーリー」という鳴き声は、秋の訪れを知らせてくれる音である一方で、その音量や連続性から、人によっては騒音に感じられることもあります。
しかし、アオマツムシもまた、日本の自然の一部であり、その生態や鳴き声の特徴を知ることで、見方が変わってくるかもしれません。
騒音と感じたときも、まずはその音の正体を知り、うまく付き合っていく方法を探してみてはいかがでしょうか。
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