ヒアリは、日本国内での発見が相次ぎ、その強力な毒性で社会的な懸念が高まっていました。
ですが、この侵略的な外来種に対し、私たちの身近に生息する「在来アリ」が意外な「弱点」を提供してくれる可能性があることをご存知でしょうか?
この記事では、ヒアリの生態と対策に焦点を当て、特に在来のクロオオアリを含む日本のアリとの関係から、新たな防除のヒントを探っていきます。
😱 ヒアリの驚異と、従来の対策の限界
ヒアリの危険性とは?
ヒアリ(Solenopsis invicta)は、南米原産の極めて攻撃的なアリで、その名前の通り、刺されると火傷のような激しい痛みを伴います。
最悪の場合、アナフィラキシーショックを引き起こし、生命に関わる危険性もあります。
🚨 従来の対策の課題
現在、ヒアリ対策としては、殺虫剤による駆除やベイト剤(毒餌)の使用が主流です。
しかし、ヒアリは繁殖力が非常に高く、広範囲に生息域を拡大するため、従来の対症療法的な対策だけでは完全な根絶が難しいのが現状です。
🧪 ヒアリが「日本の在来アリ由来物質」を苦手とする可能性
クロオオアリ含む在来アリとヒアリの関係
神戸大学などの研究では、興味深い知見が報告されています。
これは、日本の在来アリが持つ特有の化学物質が、外来種のアリ、特にヒアリやアルゼンチンアリに対して強い忌避効果(嫌がる効果)を示すというものです。
- 忌避効果が確認されたアリ
- ヒアリ
- アルゼンチンアリ
- 忌避効果がほとんどみられなかったアリ (日本の在来アリ)
- イエヒメアリ
- アミメアリ
- クロオオアリ
- クロヤマアリ
この研究では、在来アリが持つ特定のフェロモン様物質が、ヒアリなどにとって「仮想敵」の存在を示すシグナルとして機能し、その場を避ける行動を促している可能性が示唆されています。
💡 クロオオアリ「そのもの」が苦手なのではない
重要な点として、ヒアリが「クロオオアリ」という種そのものを苦手としているわけではなく、クロオオアリなどの在来アリが体外に放出する特定の化学物質(例えば、(Z)-9-トリコセンなど)に対し、ヒアリが強い忌避反応を示す、ということです。
これは、在来アリがヒアリの侵入を防ぐ「天然のバリア」となる可能性があります。
🛡️ 新しいヒアリ対策への期待
在来アリの「バリア機能」を活用
この研究成果は、従来の化学的な殺虫剤に頼るだけでなく、日本の生態系が持つ天然の防御システムを活用した、より環境に優しい新たな防除方法の開発に繋がるとして注目されています。
- 天然忌避剤の開発
在来アリ由来の忌避成分を抽出・合成し、ヒアリの侵入経路や生息地に散布することで、安全かつ効果的なバリアを築く。 - 生態系保全の重要性
在来アリが健全に生息する環境を維持することが、結果的にヒアリの定着を妨げる一因となる可能性。
🤝 クロオオアリを守ることの意義
日本最大の在来アリの一つであるクロオオアリは、森林や公園など自然な環境に生息しています。
彼らの存在は、ヒアリのような侵略的外来種から私たちの生活圏を守る「隠れた防衛隊」としての役割を果たすかもしれません。
📝 まとめ:ヒアリ対策のキーワード
| 項目 | ポイント |
| ヒアリの危険性 | 毒性が強く、アナフィラキシーショックの危険性。 |
| 従来の課題 | 殺虫剤やベイト剤だけでは根絶が難しい。 |
| 新たな視点 | 在来アリ由来の物質がヒアリに対し強い忌避効果。 |
| クロオオアリ | 忌避物質を持つ在来アリの一種であり、ヒアリはその物質を避ける。 |
| 今後の対策 | 在来アリ由来の天然忌避剤開発と、生態系保全。 |
ヒアリの脅威から身を守るために、日本の自然界に存在する在来アリとの興味深い関係が、未来の対策を大きく変えるかもしれません。


コメント