ヘビトンボは、幼虫と成虫で食性が大きく異なるユニークな昆虫です。
特に幼虫(孫太郎虫)は、清流に棲む獰猛なハンターとして知られています。
この記事では、ヘビトンボの幼虫(孫太郎虫)と成虫が自然界で何を食べているのか、また、もし飼育したい場合にどんなエサを用意すれば良いのかを解説します。
1. 幼虫(孫太郎虫)のエサ:水中の獰猛なハンター
ヘビトンボの幼虫は「孫太郎虫」と呼ばれ、非常に発達した大アゴを持つ肉食性の捕食者(プレデター)です。
清流の石の下に潜み、近づいてきた獲物を捕らえて丸呑みにします。
自然界での主なエサ
幼虫は、自分より小さな水生昆虫や小動物を捕食します。
- 水生昆虫の幼虫
- カゲロウの幼虫
- トビケラの幼虫
- ユスリカの幼虫(アカムシなど)
- カワゲラの幼虫
- その他の小動物
- ミミズ(水中に落ちたもの)
- 小魚やオタマジャクシ(機会があれば)
水のきれいな環境で豊富な生きたエサを食べることで、幼虫は2〜3年かけて大きく成長します。
幼虫を飼育する際のおすすめのエサ
孫太郎虫を飼育する際は、生きたエサを与えるのが最も理想的です。
| エサの種類 | 特徴と与え方のポイント |
| 生きた水生昆虫 | 最適なエサ。イトミミズや、川で捕獲した他の小型水生昆虫を与えます。 |
| 生きたミミズ | 比較的入手しやすく、大型の幼虫に適しています。 与えすぎると水質が悪化するので、幼虫が食べきれる量にしましょう。 |
| 魚の切り身/刺身 | 代用食として利用できます。 細かく切ってピンセットで口元に持っていくと食べやすいです。 食べ残しはすぐに取り除き、水が汚れるのを防ぎましょう。 |
| 釣りの生き餌 | ミルワームやサバ虫(サシ)など、釣り用の生き餌も代用可能です。 |
【注意点】
幼虫は共食いをすることがあるため、飼育ケース内に複数の幼虫がいる場合は、エサが不足しないように注意が必要です。
2. 成虫のエサ:樹液や花粉を好む?
水中の獰猛なハンターだった幼虫時代とは異なり、ヘビトンボの成虫は、主に植物性の水分や糖分を摂取します。
成虫の寿命は短く、数日〜10日ほどです。
自然界での主なエサ
成虫は、長距離を飛ぶためのエネルギー源を補給します。
- 樹液
カブトムシやクワガタムシが集まるナラ類などの広葉樹の樹液を吸汁します。 - 小昆虫
夜間に灯火などに飛来した際に、小さな昆虫を捕食することもあるとされています。 - 花粉や花蜜
一部のヘビトンボの仲間(例:アマミモンヘビトンボ)では、花粉を摂取することが確認されており、成虫の主なエネルギー源となっている可能性があります。 - 水分
樹液や水辺で水分補給を行います。
成虫を飼育する際のエサ
成虫は基本的に寿命が短いですが、一時的に観察するために飼育する場合は、エネルギー源となる甘いものを用意します。
- 昆虫ゼリー
カブトムシ・クワガタムシ用の昆虫ゼリーは、樹液の代わりとなり、手軽なエネルギー源になります。 - 砂糖水・スポーツドリンク
脱水や栄養補給のために、浅い皿に入れて与えることができます。 - 樹液に集まる小昆虫
飼育ケース内に小さな蛾やコバエなどを入れておくと、捕食する様子が見られるかもしれません。
3. ヘビトンボの食性と水質の関係
ヘビトンボの幼虫が生きた水生昆虫を主食としていることは、生態系全体にとって重要な意味を持ちます。
- 水質の指標
ヘビトンボの幼虫は、水のきれいな環境(清流)にしか生息できません。
彼らが生きているということは、彼らのエサとなる水生昆虫も生きており、その環境が清浄である証となります。 - 食物連鎖
幼虫は、他の水生昆虫を捕食することで、水中の食物連鎖の上位に位置しています。
ヘビトンボの幼虫が豊富なエサを食べて大きく育つ清流は、それ自体が豊かな生態系を保っていると言えるでしょう。
まとめ
ヘビトンボは、成長段階によって食性を大きく変えます。
| 段階 | 主な食性 | 飼育時のエサ例 |
| 幼虫(孫太郎虫) | 肉食性:水生昆虫や小動物 | 生きたミミズ、水生昆虫、魚の切り身 |
| 成虫 | 糖分・水分:樹液や花粉 | 昆虫ゼリー、砂糖水 |
もしヘビトンボを飼育する場合は、それぞれの段階に合わせて適切で新鮮なエサを用意し、特に幼虫は水質の悪化に注意して管理しましょう。

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