1. カミキリムシの「餌」の基礎知識
カミキリムシ(天牛)は、カブトムシやクワガタムシと同じ甲虫の仲間ですが、幼虫と成虫で食べるものが全く違うという大きな特徴があります。
すべてのカミキリムシは植物に依存する「植食性」で、この食性の違いこそがカミキリムシ飼育を面白く、そして難しくする最大のポイントです。
この記事では、カミキリムシの成虫と幼虫が野外で何を食べているのか、そして飼育下で何を代用餌として与えれば良いのかを解説します。
【成虫編】カミキリムシの種類別エサの与え方と代用餌
カミキリムシの成虫は、大きく分けて3つの食性タイプに分かれます。
お手元のカミキリがどのタイプかを確認しましょう。
タイプ別:カミキリムシ成虫の食性と飼育餌
食性タイプ | 野外での主な食性 | 飼育時の代用餌(推奨) | 代表的な種類 |
樹皮・葉食性 | 幼虫が育った樹木の樹皮、新芽、葉脈など | 昆虫ゼリー、リンゴやカボチャなどの新鮮な果物・野菜、ホストツリーの生枝 | ゴマダラカミキリ、シロスジカミキリ、クワカミキリなど |
樹液・花蜜食性 | 広葉樹の樹液、または花の蜜 | 昆虫ゼリー(黒糖風味など)、砂糖水を染み込ませた脱脂綿 | ミヤマカミキリ、トラカミキリの一部など |
花粉食性 (ハナカミキリ類) | 花の花粉や蜜 | 昆虫ゼリー、砂糖水 | ルリボシカミキリ、ヨツスジハナカミキリなど |
飼育時の具体的な餌の選び方と注意点
① まずは「昆虫ゼリー」を試す
多くのカミキリムシにとって昆虫ゼリー(特にフルーツ系や黒糖風味)は栄養価が高く、水分補給も兼ねられる万能な代用餌です。
野外で何を食べていたか不明な場合は、まずゼリーから与えてみましょう。
② 果物・野菜を与えるなら「新鮮さ」が命
リンゴ、キュウリ、カボチャなどの果物や野菜のスライスもよく食べますが、腐りやすいため、2〜3日に一度は必ず交換してください。
カビはカミキリムシの健康を害する最大の敵です。
③ 長生きさせる秘訣は「ホストツリー」
ゴマダラカミキリであればミカンやヤナギ、シロスジカミキリであればクヌギやコナラといった、その種が野外で食べる生きた枝や樹皮をケースに入れると、安定して長生きしやすい傾向があります。
3. 【幼虫編】カミキリムシの幼虫が食べるエサ(テッポウムシ)
カミキリムシの幼虫は、その強靭な顎で木の中を掘り進み、材を食べて成長します。
この幼虫は俗に「テッポウムシ」とも呼ばれます。
幼虫の期間は数ヶ月から3〜4年と長く、成虫飼育とは比べ物にならないほど餌の用意が難しいのが特徴です。
幼虫の食性は大きく2つに分類される
食性タイプ | 食べるもの(エサ材) | 代表的な種類 | 飼育のポイント |
生木食い | 生きた樹木の材(木質部)や内樹皮 | ゴマダラカミキリ、クビアカツヤカミキリ、シロスジカミキリなど | 幼虫が食害していた樹木の新鮮な生材を定期的に交換する必要がある。 |
朽木食い | 枯れ木、倒木、腐朽した材など | ノコギリカミキリ、ウスバカミキリ、一部のハナカミキリなど | 腐朽が進んだ材を乾燥させないように管理する。クワガタのマットが使える場合もあるが、種類によって好みが異なる。 |
草本食い | 草花の生きた茎の内部 | ラミーカミキリ(カラムシの茎)など | 幼虫が食べている食草の新鮮な茎を、乾燥させないように供給し続ける。 |
幼虫飼育の注意点
- 乾燥厳禁
幼虫が材を食べるには、ある程度の湿度が必要です。
材が乾燥すると、食いが悪くなったり、発育が止まったりします。 - 餌材の交換
幼虫は材をほとんど食べ尽くすと、新しい材へ移動します。
食痕(木くずとフンの混ざった排出物)が大量に出始めたり、材の劣化が見られたりしたら、新しい餌材への交換が必要です。 - ホストの特定
幼虫を捕まえた場合、その幼虫が食べていた木の種類(ホストツリー)を正確に特定することが、飼育成功の鍵となります。
4. エサやり以外のカミキリ飼育の秘訣
カミキリムシの健康は餌だけでなく、環境によって大きく左右されます。
- 水分補給
昆虫ゼリーや果物で水分が取れますが、特に乾燥しやすい環境では、1日1回、霧吹きで飼育ケースの壁や枝を軽く湿らせてあげましょう。 - カビ対策
カミキリムシはカビに弱いです。
食べ残しやフンはこまめに取り除き、風通しの良い日陰で飼育ケースを管理することが重要です。 - 噛みつきに注意
カミキリムシの顎は強力です。
餌の交換や掃除で触れる際は、ピンセットを使い、噛まれないように注意してください。
カミキリムシの餌は種類によって非常に多様です。
捕まえたカミキリがどのタイプかを知り、適切な餌を提供することが、長く観察を楽しむための第一歩となります。
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