秋の空で赤トンボ(アキアカネ)が大量に群れて飛んでいる光景は、日本の秋の風物詩ですね。
この群れの正体は、彼らが一年を通じて行う「大移動(渡り)」と「繁殖活動」に関係しています。
結論から言うと、赤トンボが群れるのは「夏の避暑地である山から、子孫を残すために平地へ一斉に帰ってきたから」です。
1. 「赤トンボ」の正体|アキアカネの大移動とは?
一般的に「赤トンボ」と呼ばれているのは、ほとんどがアキアカネという種類のトンボです。
彼らは、私たちには想像できないような壮大な旅をしています。
時期 | 場所と行動 | 目的 |
春〜初夏(5月・6月頃) | 平地の水田などで羽化(誕生)。 まだ体は赤くありません。 | 誕生 |
夏(7月・8月頃) | 標高の高い山地や高原へ移動し、夏を過ごす。 | 避暑(暑さから逃げる) |
秋(9月・10月頃) | 山から平地へ一斉に下りてくる。体色が赤く成熟する。 | 繁殖(子孫を残す) |
アキアカネは暑さに弱いため、夏の間は標高の高い涼しい場所で過ごします。
夏が終わり、平地が過ごしやすい気温になると、子孫を残すために集団で元の平地へと戻ってくるのです。
なぜ「群れ」になるの?
山から平地に戻ってきたアキアカネが群れを作るのは、主に「繁殖場所への集合」と「採食(餌を食べる)活動」のためです。
① 繁殖(産卵)のための一斉集合
平地に下りてきたアキアカネの最大の目的は、産卵です。
彼らは主に水田の跡や水たまりなど、幼虫(ヤゴ)が育ちやすい場所に集まります。
- パートナー探し
多くのオスとメスが一カ所に集まることで、効率よく交尾相手を見つけます。
交尾の際には、オスとメスがハート型の輪のようになって飛ぶ姿が見られます。 - 産卵
交尾を終えたメスは、水面に卵を産み付けます。
産卵に適した場所は限られているため、多くの個体がそこに集中し、結果的に大きな群れになるのです。
② 採食(餌を食べる)活動
夕暮れ時や明け方など、気温が下がってくると、ユスリカなどの小さな虫も活発に活動し始めます。
アキアカネはこれらの虫を食べるために集団で飛び回ります(採餌飛翔)。
この「山からの大移動」と「繁殖場所への集合」の時期が重なることで、私たちは秋の空に赤トンボの大きな群れを目にすることになるのです。
📢豆知識|赤くないのに群れるトンボ
秋に群れているトンボの中には、ウスバキトンボもいます。
このトンボも大群で渡りをしますが、体はあまり赤くありません。
彼らは熱帯地方から飛来し、日本で繁殖した後、冬を越せずに死んでしまう「死滅回遊」という生態を持つ、別種のトンボです。
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