秋の夜長に「シリシリ」という涼しげな鳴き声で私たちを楽しませてくれるササキリ。
キリギリスの仲間の中でも比較的小型で、その生態を間近で観察しやすい人気の昆虫です。
この記事では、ササキリを健康に育て、長くその鳴き声を楽しむための飼育方法を、餌から環境、そして産卵の管理まで詳しくご紹介します。
1. 飼育容器と環境:ササキリが快適に過ごす場所
ササキリは活発に動き回るため、立体的な空間を意識した飼育環境を用意することが重要です。
必要な飼育グッズ
- 飼育容器
高さがあるプラスチックケースや昆虫ケースを選びましょう。
彼らは垂直の壁も登れるため、蓋はしっかり閉まるものが必要です。 - 足場と隠れ家
イネ科の草(ススキ、エノコログサなど)の茎や枝を数本入れて、登ったり隠れたりできる足場を作ってあげましょう。 - 床材
掃除しやすいよう、乾燥した砂や新聞紙を敷く、または湿らせた赤玉土などを薄く敷きます。
湿度の管理が鍵
ササキリは乾燥に弱いため、水分補給と湿度管理が非常に重要です。
- 給水
フィルムケースなどに水を含ませた脱脂綿やスポンジを詰めた給水器を用意し、常に水が飲めるように設置します。 - 湿度
容器全体を過度に湿らせる必要はありませんが、特に夏場や乾燥する時期は、霧吹きで時々ケース内に軽く水分を与えましょう。
ただし、過湿は病気の原因になるので、通気を良くすることも忘れないでください。
2. 餌(エサ)の与え方:雑食性のササキリに最適なメニュー
ササキリは植物質だけでなく、動物質のタンパク質も必要とする雑食性です。
特に動物質が不足すると、共食いを起こす原因になるため注意が必要です。
餌の種類 | 具体的な例 | ポイント |
植物質(主食) | イネ科の穂(スズメノカタビラ、エノコログサなど)、キュウリ、ナス、リンゴ、カボチャ | イネ科の柔らかい部分や穂が最も好物です。野菜や果物は新鮮なものを与えましょう。 |
動物質(タンパク質) | ドッグフード、観賞魚の餌(乾燥アカムシなど)、煮干し、サナギ粉 | 2~3日に一度、少量を与えます。ドッグフードや魚の餌は手軽なタンパク質源として優秀です。 |
与える餌は毎日交換し、特に野菜や果物は腐敗しやすいので注意しましょう。
3. 産卵と越冬:命をつなぐための管理
ササキリの寿命は長くありませんが、メスが産んだ卵を管理することで、翌年再び幼虫を孵化させることができます。
産卵環境(産卵床)の作り方
ササキリは自然界では、イネ科植物の茎の根元や葉鞘(ようしょう)の中に産卵管を差し込んで卵を産みます。
- 産卵基質
容器の底に湿らせた赤玉土や砂を5~10cm程度の深さに敷き詰めます。 - イネ科の茎
ススキやチガヤなどの枯れた茎を根元から切り、土に挿して林立させます。
メスはこの茎に産卵します。 - 交尾
オスとメスを一緒に飼育し、オスが鳴いて求愛することで交尾が行われます。
メスは交尾後に産卵を始めます。
卵の越冬管理
ササキリの卵は、そのまま飼育ケースの中で越冬させます。
- 管理場所
卵を産み付けた茎や土ごと、直射日光の当たらない涼しい屋外に置きます。 - 水やり
冬の間は乾燥しすぎないよう、月に一度程度、軽く水を与える程度で十分です。
過度な水分はカビの原因になります。 - 孵化
翌年の6月頃になると、暖かい時期に幼虫が孵化してきます。
孵化後の幼虫飼育のポイント
孵化直後の幼虫は非常に小さいですが、成虫と同様に雑食です。
- 餌
イネ科植物の新芽や柔らかい葉を中心に与えます。
幼虫が食べやすいように、すりおろしたキュウリや少量の動物質(サナギ粉など)も与えましょう。 - 共食い防止
幼虫が小さい時期は特に共食いが起こりやすいため、餌を欠かさず与え、過密にならないよう注意が必要です。
💡 飼育のコツ:トラブルを避けて長く楽しむために
共食い防止策
ササキリの仲間は肉食性が強く、特にタンパク質が不足したり、容器が過密になったりすると、共食いを起こします。
- 動物質を欠かさない
ドッグフードや観賞魚の餌を定期的に与えましょう。 - 多頭飼育の注意
複数の個体を飼育する場合は、スペースを広く取り、隠れ家を多く設けるようにしてください。
脱皮の失敗を防ぐ
脱皮は昆虫にとって命がけの作業です。
脱皮直前の個体は餌を食べなくなり、あまり動かなくなります。
- 足場
脱皮しやすいように、垂直な足場(茎や枝)を必ず用意しておきましょう。 - 湿度
脱皮不全を防ぐため、脱皮前後は特に乾燥させすぎないように注意が必要です。
ササキリの飼育は、その美しい鳴き声を毎日楽しめるだけでなく、幼虫から成虫、そして次の世代への命のつながりを観察できる素晴らしい体験です。
ぜひこの記事を参考に、ササキリとの生活を楽しんでください!
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