夏の風物詩といえば、けたたましく鳴くセミの声。
その声を聞くと「夏が来た!」と感じる方も多いのではないでしょうか。
しかし、一口にセミといっても、日本には様々な種類が生息しており、それぞれ異なる鳴き声や生態を持っています。
この記事では、日本で見られるセミの種類と、その特徴について詳しく解説します。
代表的なセミの種類とその特徴
日本には約30種類のセミが生息していると言われています。
その中でも特に身近で、私たちの耳に届く機会の多いセミをいくつかご紹介しましょう。
1. クマゼミ
「シャアシャアシャア……」と非常に大きな声で鳴くセミです。
都市部や西日本に多く生息しており、その鳴き声は夏の昼間のシンボルともいえます。
アブラゼミよりも体が大きく、黒っぽい色をしています。
近年、地球温暖化の影響で生息域が北上していると言われています。

2. アブラゼミ
「ジージー……」という油を揚げるような独特の鳴き声が特徴です。
日本全国に広く分布しており、最も身近なセミの一つと言えるでしょう。
茶褐色で、翅が透明ではないため、見た目でも他のセミと区別しやすいです。

3. ミンミンゼミ
「ミーンミンミンミンミー……」と、その名の通り「ミーン」と聞こえる特徴的な鳴き声を出すセミです。
比較的涼しい地域や、山間部、公園などに生息しています。
アブラゼミと大きさは同じくらいで、緑色の体に黒い斑点があります。

4. ニイニイゼミ
「チー……」と短い間隔で鳴くセミで、梅雨明け頃から早く鳴き始めます。
小型で、コケのようなまだら模様が特徴です。
低山地や林の縁などでよく見かけられます。

5. ツクツクボウシ
「ツクツクボーシ、ツクツクボーシ、オーシンツクツク……」と独特のリズムで鳴くセミです。
夏の終わり頃から鳴き始め、晩夏の風情を感じさせます。
比較的小型で、緑色と黒のまだら模様をしています。

さらに詳しく、日本の多様なセミたちをいくつかピックアップしてご紹介します。
すべての30種を網羅するのは難しいため、特に興味深い種類や、鳴き声に特徴がある種類に焦点を当てて解説します。
日本のセミ|多様な鳴き声と生息地
春に鳴くセミ
- ハルゼミ
- 特徴: 全長3.5cmほどの小型のセミで、体は黒く、翅は透明です。
- 鳴き声: 「ムゼー、ムゼー……」「ギーギーギー……」と聞こえる独特の鳴き声で、他のセミが鳴き始める前の4月下旬から6月頃に姿を現します。
- 生息地: 主に平地から低山地のマツ林に生息しています。
- エゾハルゼミ
- 特徴: ハルゼミに似ていますが、より大型で、特に東北地方や北海道に多く見られます。
- 鳴き声: 「ミョーキン・ミョーキン・ケケケケケケケッ」と、複雑な鳴き方をします。
- 生息地: 北海道から九州の山地にかけて幅広く分布し、広葉樹林に生息します。
- ヒメハルゼミ
- 特徴: ハルゼミよりもさらに小型で、体は黒っぽく、翅は透明です。
- 鳴き声: 「ギーィ……」と、やや甲高い連続音で鳴きます。
- 生息地: 主に山地性のセミで、本州中部以南の低山地や里山に生息します。
夏に鳴くセミ(代表種以外のもの)

- ヒグラシ
- 特徴: 体は緑色から褐色をしており、夕暮れ時や明け方に鳴くのが特徴です。
- 鳴き声: 「カナカナカナ……」と、涼しげで物悲しい鳴き声は、夏の夕暮れの情景と結びついています。
- 生息地: 北海道から九州まで広く分布し、山間部の林縁などでよく見られます。
- コエゾゼミ
- 特徴: エゾゼミに似ていますが、一回り小型です。
- 鳴き声: 「ジー・ジー・ジー……」と、エゾゼミよりも単調な鳴き声です。
- 生息地: 北海道から九州までの山地に広く分布します。
- アカエゾゼミ
- 特徴: エゾゼミ類の中でも特に体が赤みを帯びているのが特徴です。
- 鳴き声: 「ジリジリジリ……」と、やや速いテンポで鳴きます。
- 生息地: 北海道から九州の山地にかけて分布し、特に東北地方以北の山林に多いです。
- オオシマゼミ
- 特徴: 奄美群島や沖縄本島に生息する大型のセミで、体は黒色です。
- 鳴き声: 「シェー……」と、長く引き伸ばすような独特の鳴き声です。
- 生息地: 奄美大島以南の南西諸島に固有種として生息します。
- イワサキゼミ
- 特徴: 南西諸島に生息するセミで、体が緑色をしているのが特徴です。
- 鳴き声: 「ジー……」と、やや金属的な鳴き声です。
- 生息地: 石垣島や西表島などの南西諸島に分布します。
秋に鳴くセミ
- チッチゼミ
- 特徴: 日本最小クラスのセミで、体長は2cm程度。黒い体に白い斑点があります。
- 鳴き声: 「チッ、チッ、チッ……」と、非常に小さく短い鳴き声で、耳を澄まさなければ聞こえにくいほどです。晩夏から秋にかけて鳴きます。
- 生息地: 北海道から九州まで広く分布し、里山や公園の低木に生息しています。
- ツマグロゼミ
- 特徴: 翅の先端が黒っぽいのが特徴で、小型のセミです。
- 鳴き声: 「ジーーッ、ジーーッ……」と、やや甲高い鳴き声です。
- 生息地: 九州南部から南西諸島に分布し、ススキなどの草地で見られます。
特定の地域に生息するセミ
日本には離島や特定の地域にのみ生息する固有種も多く存在します。
- ヤエヤマニイニイ: 石垣島、西表島などに生息。
- クロイワニイニイ: 沖縄本島北部などに生息。
- ミヤコニイニイ: 宮古島に生息。
- オガサワラゼミ: 小笠原諸島に生息する固有種で、絶滅危惧種に指定されています。
- リュウキュウアブラゼミ: 沖縄本島などに生息し、アブラゼミの亜種とされています。
セミの多様性とその保護
このように、日本のセミは非常に多様性に富んでいます。
それぞれの種類が、異なる環境に適応し、独自の生態を築いています。
彼らの鳴き声は、その地域の自然環境や季節の移ろいを教えてくれる貴重な指標とも言えます。
しかし、都市開発や環境の変化により、生息環境が脅かされているセミの種類も少なくありません。
特に、特定の地域にしか生息しない固有種は、絶滅の危機に瀕しているものもあります。
セミの多様性を守るためには、彼らの生息環境である森林や里山、そして都市の緑地を守り、保全していくことが重要です。
身近なセミに興味を持つことから、日本の豊かな自然環境について考えるきっかけに繋がれば幸いです。
セミの生態と寿命
セミは、幼虫として数年から十数年もの間、地中で過ごします。
木の根から樹液を吸って成長し、準備が整うと地上に出てきて成虫となります。
成虫になってからの寿命は短く、この短い期間で子孫を残すために全力で鳴き、活動します。
セミの鳴き声からわかること
セミの鳴き声は、私たちに夏の訪れを知らせるだけでなく、様々な情報を含んでいます。
オスがメスを呼ぶための求愛行動であったり、縄張りを主張するための威嚇であったりします。
また、種類によって鳴く時間帯が異なるため、鳴き声からその場所に生息するセミの種類を推測することも可能です。
まとめ
普段何気なく聞いているセミの鳴き声も、その種類や生態を知ることで、より深く夏の自然を感じられるのではないでしょうか。
今年の夏は、ぜひ様々なセミの鳴き声に耳を傾け、その違いを楽しんでみてください。
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