冬が近づき、辺りが雪景色になったり霜が降りたりすると、「昆虫たちはどこへ行ってしまったのだろう?」と疑問に思うかもしれません。
夏の間、賑やかに活動していた彼らの姿を見かけなくなると、まるでこの世から消えてしまったかのようです。
ですが、昆虫のほとんどは、寒い冬を乗り越えるための驚くべき戦略を持って、私たちのすぐそばでひっそりと生きています。
この記事では、
- 冬に見られる代表的な昆虫と探し方
- 昆虫の驚きの「冬越し(越冬)」のバリエーション
- 冬の昆虫観察の魅力と注意点
について解説します。
冬に見られる代表的な昆虫と探し方
「冬の昆虫」というとピンとこないかもしれませんが、実は活動している種類もいますし、じっとしている種類を見つけるのも楽しみの一つです。
🐞 冬でも活動する昆虫たち
寒い時期でも活動する、比較的見つけやすい昆虫をご紹介します。
| 昆虫名 | 特徴と探し方 |
| ナナホシテントウ | 晴れた日の日中に、建物の壁や草むらを歩いていることがあります。 冬でも比較的温暖な日は、日向ぼっこに出てきます。 |
| アブラムシ | 多くの種類が、植物の芽や根元で集団で生活しています。 特にキャベツや大根などの野菜についていることが多く、冬の貴重な食料源となります。 |
| ユキムシ(トドノネオオワタムシ) | 雪が降る時期に、フワフワと白い綿のようなものを付けて飛んでいる姿が見られます。 「雪虫が飛ぶと数日中に雪が降る」と言われる、冬の風物詩です。 |
| ガガンボの仲間 | 成虫で越冬する種類がおり、真冬でも水辺の近くや湿った場所で見られることがあります。 |
🌳 越冬場所を探して見つける昆虫
活動はしていませんが、冬越し中の姿を見つけることも、冬の昆虫観察の醍醐味です。
- カマキリの卵
枯れた草の茎や木の枝に産み付けられた、泡が固まったような塊(卵鞘:らんしょう)を探しましょう。 - クワガタ・カブトムシ
朽ち木の中や、倒木の樹皮の裏側、腐葉土の中などを探すと、幼虫や成虫が冬眠している姿を見つけられることがあります。 - チョウの仲間(例:オオムラサキ、ルリタテハ)
木の洞(うろ)や、落ち葉の隙間、建物の軒下などで成虫がじっと翅を閉じて休眠しています。
昆虫の驚きの「冬越し(越冬)」のバリエーション
昆虫が冬を乗り越える方法は、種によって多種多様です。
主な「越冬態(えっとうたい)」を知ることで、彼らの生命力の強さに驚かされるでしょう。
① 卵で越冬
最も一般的な方法の一つです。親は冬が来る前に卵を産み、その年の命を終えます。
卵は寒さに耐えられるよう、硬い殻や特別な粘液で守られており、春の暖かさで孵化を待ちます。
代表的な昆虫:バッタ、カマキリ、アゲハチョウなど
② 幼虫で越冬
多くのチョウや甲虫、ハチの仲間はこの方法を選びます。
土の中、朽ち木の中、あるいは巣の中で、代謝を極限まで落とした状態で春を待ちます。
この時期の幼虫は動きませんが、体を傷つけないよう注意深く観察しましょう。
代表的な昆虫:カブトムシ、クワガタムシ、ハチ、トンボのヤゴ(水中)など
③ 蛹(さなぎ)で越冬
幼虫が最後の脱皮で固い殻を被った蛹となり、じっと動かずに越冬します。
この間、体の中では成虫になるための劇的な変化(変態)が進んでいます。
代表的な昆虫:モンシロチョウ、アゲハチョウ(蛹)など
④ 成虫で越冬(冬眠・休眠)
成虫の姿のまま冬を越します。木の洞や落ち葉の下、石の下など、比較的暖かい場所に身を潜めます。
気温が上がれば一時的に活動を再開することもあります。
代表的な昆虫:カメムシ、テントウムシ、クワガタムシ(一部)、オオムラサキ(チョウ)など
冬の昆虫観察の魅力と注意点
冬の昆虫観察は、夏の観察とは違った魅力があります。
魅力
- 発見の喜び
雪の下や枯れ葉の中に隠れている姿を見つけた時の喜びはひとしおです。 - 生態の理解
昆虫の生命のサイクルや、冬を生き抜く知恵を深く学ぶことができます。
⚠️ 観察時の注意点
- 静かに見守る
越冬中の昆虫は、少しの刺激で体力を消耗したり、越冬場所を失ったりする可能性があります。
発見したらそっと観察し、元の状態に戻してあげましょう。 - 防寒対策
観察する人間側の防寒対策をしっかり行い、安全に楽しみましょう。
まとめ
「冬の昆虫」は、夏の賑やかな姿とは一変し、厳しい寒さに耐えながら静かに春を待っています。
卵、幼虫、蛹、そして成虫という多様な姿で越冬する彼らの存在は、自然界の驚異的な生命力を私たちに教えてくれます。
是非この冬は、いつも見過ごしていた足元や木々の様子に注目して、小さな生命の息吹を探してみてはいかがでしょうか。


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